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アンモニア発電 アンモニア発電

CO2フリー燃料として注目が集まるアンモニアを火力発電に活用

アンモニアを燃料として利用することで、
石炭火力発電所が排出するCO2の大幅な削減を目指します。

園山 希

SONOYAMA Nozomu

NEDO環境部
次世代火力・CCUSグループ 主査
プロジェクトマネージャー

100万kWの石炭火力発電設備で
アンモニア20%混焼を目指す

水素を低コストで効率よく輸送・貯蔵できるアンモニアは、エネルギーキャリアとしての役割に加え、燃焼時にCO2を排出しない火力発電の燃料としても期待されています。

NEDOは、2021年7月から、大型の商用石炭火力発電所において石炭とアンモニアの混焼による発電を行い、アンモニア混焼技術を確立するための実証事業を開始しました。

NEDOの園山 希主査はこのプロジェクトの意義について次のように説明します。

「燃焼の際にCO2を排出しないアンモニアは、脱炭素社会の実現に欠かせない重要な物質の一つです。今回のプロジェクトでは、石炭火力発電所の燃料にアンモニアを利用する技術の確立を目指し、要素技術の開発と実証研究に取り組みます」

アンモニアは、世界では肥料原料、日本では化学工業の基礎原料として広く活用されており、製造・輸送・貯蔵技術や安全対策も実用レベルにあります。火力発電のボイラでアンモニアを混焼する場合にも、バーナなどの変更で対応できるため、初期投資を最小限に抑えながらCO2削減を実現できます。

プロジェクトを受け持つ株式会社JERAの技術部 脱炭素エンジニアリングユニット長の一柳真規氏は、「具体的には当社の発電出力100万kWの石炭火力発電設備で、2024年度にアンモニアを20%混焼することが目標です。また、アンモニアの20%混焼を確実に行うため、現在は碧南火力発電所の5号機で、材質の異なるバーナを用いたアンモニアの小規模混焼試験を行い、実証用バーナの条件を検討しています」と計画の進捗について話します。

今回のような、大型の商用石炭火力発電所で大量のアンモニアを混焼する実証事業は世界初の試みです。

一柳氏はNEDO事業のメリットとして、「実際の商用機を使った実証研究は、一事業者だけではなかなかハードルの高いチャレンジですが、NEDO事業に参画することでパートナーと共に取り組むことができます。合意形成がしやすく、社会実装への歩みも加速するでしょう」と期待を込めます。

実証実験を行う碧南火力発電所(愛知県碧南市)

サプライチェーンの構築と
コスト低減が今後の課題

仮に国内の大手電力会社が保有するすべての石炭火力発電所でアンモニアを20%混焼すれば、年間約4000万トンのCO2を削減することができます。

火力発電のCO2排出量は、日本国内のCO2総排出量の約4割を占めているため、脱炭素社会を実現する取り組みの一つが、アンモニアの混焼、そしてその先の専焼です。

一柳氏は「まず20%から始めて、火力発電所への影響や排ガス等の環境負荷特性を評価し、アンモニアの混焼率を段階的に向上させることを目指しています。また、将来的にはアンモニアだけを燃料にする専焼も視野に入れて研究を進めます」と抱負を語ります。

課題はアンモニアの燃焼時に発生するNOxを、いかに抑制するかですが、先導研究で制御可能であることが示されています。

むしろ、アンモニアを燃料として活用する際の大きな課題は、アンモニアの安定的な供給にあります。

園山主査は「最大の課題は供給面」にあるとし、一柳氏も「20%混焼でも、1年で約50万トン必要になります。しかし、現在国内で消費されているアンモニアは100万トンですから、実証試験レベルでも年間換算すると今の消費量の半分を使うことになります。今後ビジネスとして成立させるためには、燃料用のアンモニアの調達が重要です」と話します。

一柳氏は、20%実証試験をやり切って、データを収集、評価し、次につなげることが目標とし、「火力発電を主とする当社にとってCO2の削減は大きな課題です。これまでは発電所の熱効率を向上させることで化石燃料の使用量を減らしてきましたが、アンモニアの専焼という新たな目標に向かって力を注ぎたいと思います」と意気込みを熱く語りました。

ボイラおよび改造バーナの概略

先導研究においてマルチバーナでアンモニアを20%混焼しても石炭だけを燃焼したときと同様の特性を確認。

一柳 真規 氏(右)
株式会社JERA 技術部
脱炭素エンジニアリングユニット長

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