NEDO Web Magazine

PROJECT REPORT Take the next step from success 非可食性植物由来化学品製造プロセス技術開発2013〜2019年度

CNF量産化の技術基盤を確立し、
目標以上のコストダウンを達成。

世界に先駆け、コスト競争力のある一貫製造プロセスを構築

NEDOは、2013年度からのプロジェクトにおいて、CNFやCNF樹脂複合材料を安定的に製造できるプロセスと装置の開発、そして、ユーザーが求める機能を実現するという、難度の高い技術開発を推進してきました。

その成果として、京都大学を主体とする産学連携グループは、2016年に軽量・高強度の高性能ナノ繊維と、この材料で補強した樹脂複合材料を高効率で連続的に製造する「京都プロセス」を世界に先駆けて開発することに成功しました。

京都プロセスの特徴は、CNFの集合体であるパルプを、樹脂と直接練ってパルプのナノ解繊とナノファイバーの樹脂中への均一分散を行う「パルプ直接混練法」にあります。原料である木材や竹などの木質バイオマスから疎水的なリグニンをあえてCNF表面に残す形でリグノパルプを製造し、それを化学処理した後に、パルプのナノ解繊と樹脂への混練を同時に行うため、大幅な製造コスト削減が可能です。

これらの技術を基に京都大学宇治キャンパス内にテストプラントを完成させ、化学・樹脂メーカーや自動車、家電、住宅メーカーにサンプルを提供。生産技術の最適化に取り組み、フィードバックを受けることで、さまざまな樹脂、樹脂部品の性能評価が進みました。試算によれば、射出成形用CNF添加マスターバッチ(ナイロン6)において、当初の製造コスト目標の1300円/kgを大きく下回る、718 円/kgから927円/kgを達成しました。

普及を促進する安全性評価と特性評価の情報を公開

一方、産業技術総合研究所を主体とする産学連携グループは、安全なCNF製品の開発や適切な安全管理を支援するため「試料中の微量なCNFを検出・定量する手法」や「吸入影響試験、経皮影響試験等の有害性試験手法」、「CNF粉体およびCNF応用製品の製造・使用・廃棄プロセス等におけるCNFの排出・暴露可能性に関する評価手法」を開発し、文書にまとめて公開しました。これによりCNFの製造に携わる材料メーカーと、それを製品に活用する企業とが安全性情報を共有でき、用途開発とイノベーションを促進します。

また、森林総合研究所を主体とする産学連携グループは、木質系バイオマスの物性を明らかにしつつ、原料をパルプ化、CNF化して、これらの特性を明らかにし、原料の性質と関連させ系統的にまとめました。

さらに原料の効率的な選択を支援するため、原料・パルプ・CNFの特性と、さまざまなCNFを製品に利用した場合の適性を「CNF利用促進のための原料評価書」にまとめて公開しています。これらの情報を基に、製紙業・林産業とCNFを利用する産業との新たなネットワークや新規産業が生まれることが期待されています。

このプロジェクトの成果は、2020年度からの「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発」事業に引き継がれ、さらなるコストダウンと利用用途の拡大、安全性評価の確立を進めています。

- 京都プロセス -

変性リグノセルロースナノファイバー・樹脂複合材料の一貫製造プロセス

木材細胞壁中のセルロースミクロフィブリル束
(セルロースナノファイバー)

木材細胞壁の構造(左)とパルプの電子顕微鏡写真(右)

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