NEDO Web Magazine

プロジェクト事例紹介 CNF安全性評価プロジェクト 多様な製品用途に対応した有害性評価手法の開発と安全性評価

CNFの普及を後押しするため
多様なCNFの安全性を評価

国立研究開発法人産業技術総合研究所

多様化するCNFを試験し、評価書として公開を目指す。

幅広い利用が期待されているCNFですが、健康被害を懸念する声もあります。産業技術総合研究所(以下、産総研)安全科学研究部門の小倉勇主任研究員は「CNFの実用化や普及を後押しするためにも、早い段階で人体や環境にどのような影響が起こりうるか評価し、結果を示すことが重要です」と安全性評価の意義を説明します。

2019年度までの「非可食性植物由来化学品製造プロセス技術開発」プロジェクトで、産総研はCNFの安全性評価手法の開発を行いましたが、本プロジェクトでは、よりさまざまな種類のCNFの安全性を評価することに重点を置いています。小倉主任研究員は「多様性を担保するため、広く国内メーカーに声をかけ、材料を提供してもらっていますが、NEDO事業ということで協力を得やすいのは助かります」と話します。

生態影響の評価では、水生生物(藻類、ミジンコ、魚類)へのCNFの影響を調べる。

藤田克英主任研究員も「ネガティブな結果が出たとしても公表する前提ですが、しっかりした試験結果であれば受け止める企業が増えているのは、長年のNEDO事業の成果だと思います」とこれまでの積み重ねについて語ります。

CNFは微生物が発生しやすく、試験結果に影響するため、安全性評価に当たっては微生物の汚染を防止する技術の確立が必要です。情報を共有しながら、その課題を克服し、試験は順調に進行しています。

眞野浩行主任研究員は「生態影響を評価する例は少なく、これを機会に評価が一般的になってほしい」と、NEDO事業への期待を語りました。

マクロファージなどの培養細胞を使ってCNFの吸入影響を評価する。

眞野 浩行氏(左)、小倉 勇氏(中)、藤田 克英氏(右)

眞野 浩行氏(左)
安全科学研究部門
リスク評価戦略グループ
主任研究員
博士(理学)

小倉 勇氏(中)
安全科学研究部門
排出暴露解析グループ
主任研究員
博士(工学)

藤田 克英氏(右)
安全科学研究部門
リスク評価戦略グループ
主任研究員
博士(農学)

技術開発ポイント

吸入影響評価、生態影響評価、排出・暴露評価の3つのアプローチで検証

CNFが生体に及ぼす影響を
長期的な視野で確かめる

国立大学法人 福井大学

医学部と連携し、厳しい規定の下で実験を開始。

CNFは、まだ歴史が浅く、どのような条件で、どんな影響が起きるのか未知な部分が多い素材です。当初安全とされたアスベストも、さまざまな病気を起こすことが判明したのはかなり時間が経ってからだったように、利用に際しては慎重に安全性を確認する必要があります。福井大学の繊維・マテリアル研究センター長 田上秀一教授は、「CNFは有機物であり、おそらく人体に悪影響はないだろうという認識が一般的です。しかし、CNFはナノ化した際の形状が多様で、工業化されれば使用する量も大量になるでしょう。CNF製造メーカーが微粉砕加工やCNFと樹脂の複合化、成形加工等をする際、あるいは廃棄する際に粉塵が発生する可能性がある以上、安全性の検証は必要不可欠です」とその意義を強調します。

作業空間にCNFの粉塵が発生した場合を想定した吸入暴露試験装置。

生体への安全性を評価するため、同大学の山下義裕教授は同大学医学部の徳永暁憲准教授らと連携し、学内に設置されている動物実験委員会の厳しい管理の下、できる限り実験に使用する動物の数を少なく、できる限りその動物に苦痛を与えないよう留意した実験を行っています。具体的には、霊長類で食餌にCNFを添加したときの影響を、またマウスでは同じく食餌と吸入による影響を調べ、マウスは世代交代が早いため、次世代への遺伝的な影響がないか確認します。

「国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下、産総研)との連携事業のため、これまでに産総研において蓄積された情報やノウハウを共有できたことに助けられています」と話す山下教授。今後は、本事業で得られた成果を安全性評価書にまとめ、CNFを利用する人々に幅広く活用してもらい、CNFやCNF製品の社会実装の加速につなげることを目指しています。

山下 義裕氏

山下 義裕
先進部門
繊維・マテリアル研究センター
博士(工学)

田上 秀一氏

田上 秀一
先進部門
繊維・マテリアル研究センター長
博士(工学)

徳永 暁憲法氏

徳永 暁憲法
ライフサイエンス支援センター
生物資源部門
博士(医学)

技術開発ポイント

日常に近い環境において長期的な試験を実施し、生体への影響を確認する

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