低コストで高品質なCNF強化樹脂の量産へ
京都プロセスの工業化を図る
日本製紙株式会社/宇部興産株式会社
パルプ直接混練法を洗練させ、高まるCNFニーズに応える。
2019年度までのプロジェクトで京都プロセスの実証生産設備を導入した日本製紙株式会社と、ナイロン樹脂混練プロセスによって京都大学のテストプラントの約10倍の量産化を達成した宇部興産株式会社。今回は、両社が共同で、さらなる材料性能の向上と、生産性を高めるプロセスの革新に取り組んでいます。
宇部興産ナイロン・ファイン事業部ナイロン開発部コンポジット開発グループの中川知之主席部員は「CNFに関する知見やノウハウを豊富に有している日本製紙さんと連携することで、ラボレベルから工業化へのスケールアップに展望が拓けました」と話し、同社のナイロン・ファイン事業部ナイロン開発部内貴昌弘部長も「混練したときに解繊しやすいパルプがほぼ完成に近づいている」と手応えを感じています。
日本製紙研究開発本部CNF研究所の伊達隆主席研究員は「我々が採用した製造プロセスは、パルプのナノ解繊と樹脂への混練を同時に行うことが特徴で、コストダウンに最も適した方式だと考えています」と話し、同じく福田雄二郎主席研究員は「木質バイオマスはリサイクル可能なことが特長です。報道でもマテリアルリサイクルの話題を目にすることが多く、社会的な期待の大きさを感じています」と環境問題への貢献も含めた将来性を語ります。
宇部興産の化学生産本部生産技術センターの直川典正センター長は「CNFに関する問い合わせが増えています。待っている人がいることを励みに実用化を急ぎたい」と抱負を語りました。
野々村 文就氏
日本製紙株式会社参与
研究開発本部長代理
CNF研究所長
福田 雄二郎氏
日本製紙株式会社
研究開発本部
CNF研究所 主席研究員
伊達 隆氏
日本製紙株式会社
研究開発本部
CNF研究所 主席研究員
内貴 昌弘氏
宇部興産株式会社
ナイロン・ファイン事業部
ナイロン開発部長
中川 知之氏
宇部興産株式会社
ナイロン・ファイン事業部
ナイロン開発部
コンポジット開発グループ
主席部員 博士(理学)
直川 典正氏
宇部興産株式会社
化学生産本部
生産技術センター センター長
量産に向けた変性パルプの改良処方とナイロン樹脂の選定・混練条件の最適化
省エネルギーを追求した製造プロセスや
樹脂複合化技術でコストの壁を越える
大王製紙株式会社/芝浦機械株式会社
市場にインパクトを与える低コスト化で、CNF複合化樹脂の本格利用を促進。
CNF社会実装への貢献を目指して、CNFメーカーの大王製紙株式会社と設備機械メーカーの芝浦機械株式会社は、共同で、CNF複合化樹脂の大幅な製造コスト低減に取り組んでいます。課題の解決には、大幅な生産性向上が必要不可欠ですが、芝浦機械が得意とする二軸混練押出機を用いた樹脂複合化技術と、そのフィードバックを受けた大王製紙の原料調整プロセスの改良によって、改善の道筋が見えてきました。
大王製紙の生産本部新素材研究開発室玉城道彦上席執行役員は「紙を生産してきたノウハウも生かしており、この事業を早く成立させて、炭素循環社会の実現に貢献したい」と話します。
芝浦機械成形機カンパニー押出成形機部の大石真伸主幹は「高価なCNFを多量に用いた生産設備としての実証実験は、困難であったが、大王製紙さんから十分な量の原料の提供を受け、開発が加速しました」とプロジェクトのメリットを話します。同じく安倍賢次氏は「原料形態が処理能力に影響するため、大王製紙さんにCNFの供給形態を工夫していただき処理量が格段に改善しました」と、連携による成果を語りました。
大王製紙の生産本部新素材研究開発室大川淳也室長は「芝浦機械さんとの共同開発により樹脂複合化の課題解決にもめどが立ちつつあります。プロジェクトの目標コストをクリアするのはもちろん、我々としてはもう少し高い目標を設定しています。それによって、市場に大きなインパクトを与えたい」と意気込みを語りました。
玉城 道彦氏
大王製紙株式会社
生産本部
新素材研究開発室
上席執行役員 室長
大川 淳也氏
大王製紙株式会社
生産本部
新素材研究開発室
室長
安倍 賢次氏(左)
芝浦機械株式会社
成形機カンパニー
押出成形機部
二軸設計課
大石 真伸氏(右)
芝浦機械株式会社
成形機カンパニー
押出成形機部
二軸設計課
原料CNFの前処理と、二軸押出機を用いた樹脂複合化技術による生産性向上