


バイデン大統領で変わる米国の技術イノベーション・気候変動政策
米国第46代大統領、ジョー・バイデン氏は、トランプ前大統領とは大きく異なる「技術イノベーション政策」および「気候変動政策」を公約に掲げています。
NEDOはこうした変化を敏に捉え、客観的な情報を整理・分析した「技術戦略研究センターレポート」を公表しました。

“Innovate in America”を政策に掲げ、3000億ドル(約32兆円)を新産業・技術の研究開発に投資し、数百万人の雇用を創出するとしており、世界のリーダーシップを確保。技術流出には慎重ですが、国際的な枠組みを重視する姿勢も持っています。米国の技術イノベーション政策を強化しながらも、よりいっそう同盟国重視の姿勢に転じる見込みです。


>>>考察
バイデン大統領も前政権と同様、国内で技術イノベーションが活発化することを重視。しかし貿易のルール作りで主導権を再び握るため関係国と結束していく必要性を強調。先端技術やイノベーションを巡るルール作りにいても、日本、オーストラリア、韓国といった同盟国との関係をより一層強化する可能性がある。
バイデン大統領の経済公約 経済公約は「経済政策」と「コロナ対策・経済復興」で構成。
■経済政策
製造業支援に7,000億ドル、500万人の雇用、低所得者に減税、高所得者・大企業に増税およびトランプ氏による制裁関税の見直し。

出典:Joebiden.com、Reuters、時事通信
■コロナ対策・経済復興(*第4弾のみ)
3.4兆ドル(約360兆円)
* 2020年10月時点では2.2兆ドル(約230兆円)、州・地方政府の支援、家計の支援等。
各国のコロナ経済対策費総額と対名目GDP比※

※ここで示した経済対策費は民間への融資額を含む。
※※バイデン大統領公約とトランプ政権の額はすでに成立した対策法案における2兆ドルを含む。
出典:JETROウェブサイト、世界銀行資料、朝日新聞、日経新聞、AFP通信を基にNEDO技術戦略センター作成

バイデン大統領は、大胆な気候変動政策を講じることで、気候変動に伴う不平等の是正を追求するという環境正義の基本思想を持っています。トランプ政権が離脱したパリ協定への復帰も公約に掲げており、遅くとも2050年までに米経済全体でCO2排出量をゼロにすることも表明。
具体的な施策として、「クリーンエネルギー/持続可能インフラ計画」を発表し、4年間で2兆ドル(約215兆円)を投入する計画です。さらに気候変動に焦点を当てた、省庁横断的な先進研究プロジェクト機関として「ARPA-C」設立を提言。米国の気候変動政策は大きく前進すると予測されます。
米国歴代大統領によるCO2排出量目標

出典:外務省ウェブサイト、朝日新聞、NHK、日経新聞、Joebiden.com
気候変動政策の具体的施策
バイデン大統領は、大規模なインフラ整備からなる「クリーンエネルギー/持続可能インフラ計画」を発表。 その中で、ARPA-C(Advanced Research Projects Agency focused on Climate)の新設も提言しています。
- 2020年7月14日、新たな“Clean Energy/Sustainable Infrastructure Plan”(クリーンエネルギー/持続可能インフラ計画)を発表。遅くとも2050年までに、米国の経済全体のCO₂排出量ゼロを目指すため、4年間で2兆ドル(約215兆円)を投入する計画。
- 「パリ協定」への復帰を表明するとともに、就任100日以内に気候サミットを開催、「ミッションイノベーション」への再関与も公約として発表。
- 大統領直轄の環境諮問委員会に、環境正義諮問委員会、環境正義省庁間協議会を新設。環境技術イノベーション推進のためにARPA-Cを設立するなど、体制を強化。“All of Government”アプローチ。
出典:Joebiden.com、読売新聞、Bloomberg、MIT テクノロジーレビュー

>>>考察
地球温暖化に関する野心的な政策目標を公表。パリ協定等への復帰も表明。エネルギー環境分野での国際協力が加速する可能性がある。気候変動の官製市場拡大の期待も。日本の技術力への信頼は未だ高く、更なる日米協力・国際協力を視野に入れていく。