温室効果ガスを回収、資源転換、無害化する技術の開発
これまで、CO2回収については、主に発電所や製鉄所、石油精製工場などで発生する排ガスに含まれる高濃度(数%~数十%程度)のCO2を分離・回収する技術の開発が進められ、一部は実用化しています。一方、ムーンショット型研究開発事業では、大気中に拡散し低濃度な状態(0.04%程度)のCO2を直接回収する技術(DAC:Direct Air Capture)の開発に取り組んでいます。2050年までに低コストかつ高効率なDACの社会実装を目指し、その実用化に向けた課題を解決するさまざまな技術の開発を行います。さらにDACに加えて、回収したCO2を有益な資源に転換する技術や、農地由来のメタン(CH4)や亜酸化窒素(N2O)など地球温暖化係数の高い温室効果ガスを無害化する技術の開発を行います。
電気エネルギーを利用し大気CO2を固定するバイオプロセスの研究開発
加藤 創一郎 氏
産業技術総合研究所 生命工学領域 生物プロセス研究部門
主任研究員
■CO2を有用有機物へ変換(変換効率は植物の50倍以上)
■電気を利用するスーパー微生物の人工合成
■微生物の力を最大化する気相反応リアクターを開発
産業技術総合研究所、東京工業大学、名古屋大学
大気中からの高効率CO2分離回収・炭素循環技術の開発
児玉 昭雄 氏
金沢大学 理工研究域機械工学系
教授
■革新的なポリアミン等を担持したCO2吸収材の開発
■従来技術よりも少ないエネルギーで再生可能なCO2濃縮回収プロセス
■無機分離膜を用いて高効率・省エネで液体炭化水素燃料を合成する膜反応器
金沢大学、公益財団法人地球環境産業技術研究機構
電気化学プロセスを主体とする革新的CO2大量資源化システムの開発
杉山 正和 氏
東京大学 先端科学技術研究センター
教授
■物理吸脱着と電気化学による中低温領域でのCO2濃縮プロセス
■再エネ電力を想定した電気化学プロセスによるCO2富化・還元資源化システムの構築
■小規模分散配置が可能なフレキシブルなシステム
東京大学、大阪大学、理化学研究所、宇部興産株式会社、清水建設株式会社、千代田化工建設株式会社、古河電気工業株式会社
C4S注6研究開発プロジェクト
野口 貴文 氏
東京大学大学院 工学系研究科
教授
■コンクリート廃材で大気中のCO2を吸着・回収
■CO2吸着後の廃材からCCC注7を再生し永続的に資源循環
■CO2の循環だけでなくCa資源の持続的循環にも貢献
東京大学、北海道大学
注6 Calcium Carbonate Circulation System for Construction:建設分野の炭酸カルシウム循環システム
注7 Calcium Carbonate Concrete:炭酸カルシウムコンクリート
冷熱を利用した大気中二酸化炭素直接回収の研究開発
則永 行庸 氏
名古屋大学大学院 工学研究科
教授
■液化天然ガス(LNG)の未利用冷熱を利用して大気中CO2を直接回収
■CO2をドライアイス化する昇華槽の減圧を利用し、常温で吸収・再生可能
■産業利用プロセスで利便性の高い、高純度・高圧のCO2を回収
名古屋大学、東邦瓦斯株式会社、東京理科大学
大気中CO2を利用可能な統合化固定・反応系(quad-C system注8)の開発
福島 康裕 氏
東北大学大学院 工学研究科
教授
■CO2の固定と変換を直結して効率的な反応系(quad-C system)を構築
■炭素を還元せずにCO2から化学品を省エネで生産
■モジュール化プロセスで多様な原料ガス、製品に対応
東北大学、大阪市立大学、株式会社ルネッサンス・エナジー・リサーチ
注8 Combined Carbon Capture and Conversion system
“ビヨンド・ゼロ”社会実現に向けたCO2循環システムの研究開発発
藤川 茂紀 氏
九州大学 カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所
准教授
■桁違いのCO2透過性を有する革新的な分離ナノ膜を利用したCO2回収ユニットを開発
■CO2を高効率で炭素燃料に変換する変換ユニットを開発可能
■家庭用の小規模からビル等の中規模まで対応するサイズスケーラブルなシステム
九州大学、熊本大学、北海道大学
資源循環の最適化による農地由来の温室効果ガスの排出削減
南澤 究 氏
東北大学大学院 生命科学研究科
特任教授
■N2OやCH4の主要な排出源である農地に対応
■土壌微生物の物質循環機能を活性化し、N2O及びCH4の排出を80%削減
■土壌微生物の完全解明とデザインにより、導入微生物の定着と機能発現を目指す
東北大学、農業・食品産業技術総合研究機構、東京大学