NEDO Web Magazine
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株式会社東芝

エネルギーの新しい使い方を支える次世代のリチウムイオン電池

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NEDOの役割

「リチウムイオン電池応用・実用化先端技術開発事業」他

 運輸部門における石油依存の脱却やCO2排出量の削減のため、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッドカー(PHEV)等の次世代自動車の普及拡大が期待されており、その開発・実用化の国際競争が激化しています。
 そのため、本事業においては、EVやPHEVに搭載するリチウムイオン電池について、充電1回あたりの電動走行距離の延伸を図るために、高エネルギー密度化や安全性の向上、低コスト化等に資する技術開発を行いました。
 NEDOは、これまでに蓄積した蓄電池やEV・PHEVの市場、産業、技術開発動向の知見や、マネジメントの経験とノウハウを生かしながら、各実施者の開発進捗を把握し、学識者や専門家で構成される「NEDO技術委員会(蓄電技術開発)」を定期的に開催しました。そこでの助言や指摘を反映し、必要に応じて加速予算を配賦するなど、プロジェクトの運営管理を実施しました。その結果、東芝が開発した革新的リチウムイオン電池は、予定を前倒ししての早期商品化につながりました。

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 (株)東芝は、NEDOプロジェクトを通じて、常識にとらわれない発想に基づく革新的なリチウムイオン電池の開発に取り組み、2015年に大容量タイプの、2016年に高入出力タイプの開発、実用化に成功しました。高エネルギー密度化による大容量タイプは海外の急速充電式EVや変電所の大規模蓄電設備に採用、高入出力タイプは「マイルドハイブリッド」車に活用され、大幅な燃費向上を実現しています。

安全性に優れた画期的なリチウムイオン電池

 電気自動車やプラグインハイブリッド自動車等、次世代自動車の普及に欠かせないのが、リチウムイオン電池の性能向上です。東芝は早くから、世の中にいまだかつてなかった革新的なリチウムイオン電池の研究・開発に取り組みました。
 独自の戦略を検討した結果、負極材に従来使われていた炭素系材料ではなく、「チタン酸リチウム(LTO)」を採用します。LTOは不燃のセラミック素材であり、炭素系材料を使用したリチウムイオン電池の発火の原因となるリチウム金属の析出も、発生しづらい特性があります。
 LTOを負極材に使用し、性能向上を目指した開発に取り組み、安全性を確保しながら大電流での充放電を可能にした「SCiB™」を2007年に製品化しました。

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要素技術に磨きをかけてさらなる高性能化を実現

 「SCiB™」をさらに高エネルギー密度化するために、2012年にNEDOプロジェクトの採択を受け、正極と負極の接触防止のためのセパレータの薄膜化に取り組みます。
 その結果、強度との兼ね合いを図りながら、セパレータを従来の7割まで薄くした大容量タイプ「23Ahセル」を2015年に製品化しました。本製品は変電所の蓄電設備に採用され、電力需給バランスの調整システムとして稼働しています。
 次に取り組んだのが高出力化です。高入出力タイプのセルの容量を増やすために、シート状の電極を幾重にも巻いて電極面積を増やすことに挑戦し、新たな加工法を開発した結果、高入出力タイプ「10Ahセル」が2016年に製品化されました。本製品は、新型軽自動車の「マイルドハイブリッド」に活用され、モーターのアシスト頻度を高めることで、大幅な燃費向上を実現しました。
 さらにセルの入出力性能(単位時間に入出力できる電気の量)と容量を高めるために、すでに限界とされたセパレータのより一層の薄膜化を目指しました。電極材とセパレータを一体化するという革新的な発想で、電極上に極薄のナノファイバー膜を形成する技術を採用。試作段階から実製品製造に近い装置をNEDOの支援により導入したことで、従来品に比べて入出力性能と容量を1.2倍にまで高めることに成功。現在も実用化に向けての研究開発を継続しています。
 「SCiB™」を使用した蓄電池システムは、その高い安全性が評価され、リチウムイオン電池として世界で初めて、鉄道車両の部品に要求される欧州規格で最高水準の認証を取得しました。今後ますます、この高い安全性と入出力性能、長寿命が求められる現場での活用が期待されます。
(取材:2018年9月)

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電極上に極薄のナノファイバー膜を形成する技術(エレクトロスピニング技術)。

「NEDO実用化ドキュメント」は、プロジェクトに携わった企業等にインタビューを行い、ウェブサイトで紹介。これまでに100件以上の記事を公開しています。

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