NEDO Web Magazine
FN77_SS-1.png

株式会社テムザック、株式会社NTTドコモ、九州大学

スマートモビリティで実現する次世代の生活支援技術

FN77_SS-2.jpg

NEDOの役割

「環境・医療分野の国際研究開発・実証プロジェクト/ロボット分野の国際研究開発・実証事業」他

 世界の先進国は、かつて経験したことのない高齢社会を迎えています。また、新興国においても、急速な高齢化や生活水準の向上に伴う健康志向の高まりが見込まれています。一方、世界各地で発生する各種災害への対応体制の構築も求められており、こうした背景を基に、本事業では海外の介護、医療、生産、災害等、その他現場のニーズを反映しました。そして、世界の課題解決と日本の産業競争力強化を目的とし、日本企業が強みを有するロボット技術を核としたロボットシステムの研究開発・実証を行いました。
 NEDOは、本事業を実施するに当たり、それまでに蓄積してきたロボット技術や環境・医療分野の技術開発動向の知見、マネジメントの経験・ノウハウを活かしました。そして、それらをプロジェクトの運営管理に反映させました。
 その結果、日本と同様に高齢化が進行するデンマークでの実証環境を提供することが可能に。次世代型スマートモビリティ「RODEM(ロデム)」の早期製品化につながりました。

FN77_SS-3.jpg

 次世代型スマートモビリティ「RODEM(ロデム)」の開発を進めてきた(株)テムザックは、NEDOプロジェクトのデンマークにおける実証実験を経て、製品化を実現しました。車椅子の本体前方から後ろ向きに腰を下ろすという従来の方式に替わり、本体後方から乗り込む方式を採用。使用者の移乗における身体的負担を軽減し、要介護者の自立支援および介護現場の労働環境改善に貢献します。

介護現場の重労働を変える「後ろから乗り」の次世代モビリティ

 従来の車椅子には、使用者が腰を浮かして回転移乗する際に、転倒事故が発生するリスクがあります。また介護の現場では、介護者が要介護者を抱きかかえ、車椅子への移乗を補助する「抱きかかえ移乗介護」は重労働であり、筋肉痛・腰痛の原因にもなっていました。この問題にアプローチすべく、テムザックは、「後ろから乗り」という革新的なアイデアによって「ロデム」の開発に取り組みました。
 「ロデム」を病院や介護施設へ導入するためには実証実験を行う必要がありますが、国内では規制が厳しく実験が難しい状況でした。そこで、2014年にNEDOが契約主体となり、福祉先進国デンマークのコペンハーゲン市とファーボ・ミッドフュン市との間に、実証実験のための基本協定書(MOU)を締結。デンマークの実際の介護施設やリハビリセンター等で実証実験を開始しました。

デンマークでの実証実験で「ロデム」を革新

 デンマークでの実証実験の知見を生かし、「ロデム」には実用性にさらなる改良が加えられました。前輪には前後左右へ回転可能なオムニホイールを採用し、移動はさらにスムーズに。通信技術によってスマートフォンによる遠隔操作も可能となり、モビリティとロボット両方の機能を持ち合わせました。
 改良だけではなく、「ロデム」のコンセプトの革新も進みました。例えば、デンマークの介護における考え方の日本との大きな違いは、「要介護者の自立を促す」という点でした。これにより、「ロデム」を屋内外においてシームレスに移動できるモビリティとして、要介護者の「自宅の中での自立」から「社会の中での自立」までをサポートするというコンセプトの刷新が行われました。また、座面上昇機能によって、ユーザーに「健常者に近い目線の高さ」での日常生活を提供し、精神的負担を和らげることも実現しました。
 実証実験における改善点を盛り込み、2017年11月、「ロデム」は製品化されました。2018年8月には滋賀県の草津総合病院へ量産モデル第1号を納入。また現在は、経済産業省の「新市場創造型標準化制度」の適用の下、「ロデム」を想定した新しいJIS規格「馬乗り形電動車椅子」の規格化検討が進んでいます。そして将来、「ロデム」は自動運転機能の実装も視野に入れ、ユーザーの幅も広げながら、都市全体の移動を効率化するための「シティモビリティ」となる構想も描いています。
(取材:2018年11月)

FN77_SS-4.jpg

「NEDO実用化ドキュメント」は、プロジェクトに携わった企業等にインタビューを行い、ウェブサイトで紹介。これまでに100件以上の記事を公開しています。

Top