次世代AI搭載ロボットの成果
ロボットにお茶をくむ、布を畳むといった動作をさせるには、従来は正確な位置決めや一つひとつの動作のプログラミングが必要で、非常に手間がかかりました。そこで、ロボットに次世代AIを搭載することで、道具を試す、人間の動作を見まねするといったことができるようになりました。ロボット自ら“経験”を積むことが可能になると、人間と共存するための環境適応性の獲得、環境変化への柔軟な対応や準備のためのコスト削減等、ロボット制御における課題解決につながると期待されています。
道具の機能を認識するロボット
認識クラウドエンジンの構築/作業動作自動生成システムの研究開発 中京大学橋本研究室
道具を使いこなすには「つまむ」「混ぜる」「すくう」等の機能を正しく認識する必要があります。この研究では機械学習に基づく機能認識技術やロボット動作生成技術、機械学習のための大量のデータセット作成支援技術等を開発。実際にロボットが茶道具を使いこなしてお茶をたてる様子を視聴できます。
Point
さまざまな道具の機能を認識し、使い方を自ら考えて、人のように滑らかな動きで使用します。
In the future
工場や家庭で道具を自在に扱えるロボットが活躍し、人の活動を支援することが期待されます。
人の動作から組立動作を自動で学ぶロボット
作業動作自動生成システムの研究開発 大阪大学原田研究室
組み立て作業等をロボットに置き換えるには事前に作業を記憶させるプロセスが必要です。この研究が目指しているのは、カメラの前で人間が実演するだけでロボットが必要な動作を自動生成して再現すること。これにより、作業工程の多い多品種少量生産の現場でも、ロボットを運用しやすくなると期待されます。
Point
人間がカメラの前で実演すると、ロボットが自動で動作を生成。作業を記憶させる手順が不要に。
In the future
人の手で行っている多品種少量生産の組み立て作業も、ロボットに任せられるようになります。
作業を行うヒューマノイドロボット
非整備環境対応型高信頼ヒューマノイドロボットシステムの開発 国立研究開発法人産業技術総合研究所
周辺環境の3次元計測と深層学習モデルによって対象物を検出する自律型のヒューマノイドロボットです。高速3次元重心運動生成と力分配率を用いた接触力制御により安定した多点接触運動を実現します。非整備環境でも動作可能で、人が作業できない場面や危険な現場での作業を代替することが期待されます。
Point
非整備環境でも周辺環境や対象物を検出し、手足を自在に使って移動・作業ができる自律型ロボットです。
In the future
過酷な環境での作業をロボットが担えば、人は創造的な仕事に専念できるようになるでしょう。
実環境、実時間で学習・動作するロボット
計算神経科学に基づく脳データ駆動型人工知能の研究開発(人工運動野) ATRブレインロボットインタフェース研究室
多数の関節を使った多自由度制御を実現するための方法として、バスケットボールのパスとキャッチを設定しています。左右の画像から3次元的な対象物の位置や動きを捉える両眼視機能、人間のモーションキャプチャーからの見まね学習と強化学習を備えており、実環境、実時間での学習と動作を可能とします。
Point
両眼視覚と自由度の高い上半身を持ち、実環境で人間に近い動きを自律的に学習します。
In the future
シームレスな協調作業ができるので、生産現場や生活環境での活動支援に期待されています。
状況を判断しながら自律移動する警備ロボット
知識の構造化によるロボットの知的行動の発現研究開発 明治大学理工学部機械工学科ロボット工学研究室
人材不足が深刻化する警備への活用を想定したロボットで、大径車輪と補助輪で俊敏に移動することができます。特徴はAIの環境認識と自律移動制御により学習経験のない環境でも走行できること。実際の現場では混雑具合等が日々変化しますが、機械学習によりその場の状況に応じて動くことができます。
Point
高い俊敏性を持つ移動メカニズムや環境認識、自律移動制御により、人混みでも自在に動きます。
In the future
高度なAIと高速移動性能を持つロボットとして、警備業務全般の効率化や高度化に貢献します。
人間の操縦技能を模倣するロボット
人工知能を基盤とする日常生活支援ロボットの研究開発 早稲田大学尾形研究室
模倣学習で人間の技量をコピーするロボットです。長いシーケンスの作業でも細かい動作単位で模倣し、それらを組み合わせることができます。また、データ(経験)から学習できるので、未学習の状態にも対応。柔らかい衣類を畳むなど、運動と感覚を一緒に学習する統合モデルとして研究が進められています。
Point
深層学習によって運動と感覚を一緒に学ぶ、視聴覚と運動の統合モデルを搭載しています。
In the future
限定した衣類であれば、折り畳みや洗濯等の人間が行う作業を補助できるようになります。
プロジェクト発のロボットを動画でチェック
2015年度から2019年度に実施した「次世代人工知能・ロボット中核技術開発」では、成果の一つとして「次世代人工知能を実装した6種類のロボットの実現可能性を示す」を目標としていました。そして、目標を大きく上回る成果となった11体のロボットについて、デモンストレーション等の映像を「NEDO Channel」で紹介しています。
>>「次世代人工知能を搭載したロボット」で一覧が見られます。