NEDO Web Magazine

特集1 AI・ロボットのNEXTステージ
FN77_26_p6.png次世代人工知能技術分野の成果

近年のAIの進化は目覚ましく、それに伴って人とAIとの協調の重要性も強く意識されるようになっています。本プロジェクトでは実世界で活躍する多様な分野の専門家との連携を重視し、拠点集中型で研究開発することで情報共有や共同研究を推進。それぞれの専門家が使いやすいようにAIの要素技術をモジュール群として公開しているほか、AI開発者に必要な計算環境、横展開が可能な大規模な学習済みモデル、多様な応用を可能にするデータベース等も公開し、実世界AIおよび協調型AIの発展に貢献しています。

実世界に埋め込まれるAIを拠点集中型で研究

社会的課題の解決を目指すAI研究では、実世界の問題に先端技術を適用することが新たな先端技術を生み出すという、応用研究と基礎研究の密接な連関が不可欠。また、応用分野の急速な拡大により、AIの研究はますます多分野性を強めており、それぞれの専門家との共同研究と成果の統合も不可欠なものとなっています。

そこで、本事業の次世代人工知能技術分野では産学官が連携し、目的基礎研究から実用化・事業化を推進。その中核拠点を担うのが産業技術総合研究所人工知能研究センター(AIRC)です。総括研究主幹の麻生英樹氏は「このような公的な拠点の役割は2つあり、リスクを取らないとできない次世代技術の研究開発と、プラットフォームの整備だと考えます。そこで『実世界に埋め込まれるAI』を提唱して取り組みを進め、併せて誰もが利用できる研究開発の環境を整備し、AIの社会実装の加速を目指してきました」と話しています。

これまでに見えてきた課題として麻生氏は「AIが人間と相互理解し協調するための技術がまだ不十分」という点、また「その性能が学習データ次第となるAIの品質保証の問題」を提言。「実世界の現場とそこでのサービスは多様性が非常に大きい。それぞれ個別のシステムではなく、転用しやすい形にするなど作り方自体をシステム化して容易に構築できるAIを目指すことが重要と考えています」と今後の方針を見据え、社会実装を促進するための新たなプロジェクトも展開しています。

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麻生 英樹 氏
国立研究開発法人
産業技術総合研究所
人工知能研究センター 総括研究主幹

研究開発全体の構成と狙い:次世代人工知能技術の研究開発と社会実装の好循環の実現

研究開発は、互いに密接に関連する①②③の項目を設定。産学官の英知を集結させて接点のなかった異分野間のコラボレーションを促しつつ、目的基礎研究から実用化・事業化を目指します。


AIの社会実装へ
AI応用システム開発と普及を同時に促進

AIを高度化するには高品質なビッグデータが大量に必要です。そのためには利用者に高頻度で利用してもらわなければならず、利用者のベネフィット向上、リスク低減等の仕組みを考えなければなりません。研究というと基礎研究から応用研究、事業化という流れでしたが、AIの分野では社会実装を考えておかないと必要なデータを集めることもできません。そこで産業技術総合研究所では、研究と並行して人工知能技術コンソーシアムを立ち上げ、課題解決のためのAI活用を考える道を確立してきました。

今回開発した「AI応用システムの社会実装を支援する確率モデリング技術」は、多様な生活現象のデジタル化と、計算モデルの自動構築、ユーザー価値観推定、行動予測、需要予測、確率推論、情報推薦等を実現します。例えば、三重県では、AIを活用した児童虐待対応支援システムに活用しています。DVが起こるシチュエーションから、子どもを親元に返して良いかを判断しようとしています。他にも販売店の需要予測や顧客分析、レコメンド等、さまざまな分野への応用が検討されています。

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本村 陽一 氏
国立研究開発法人
産業技術総合研究所
人工知能研究センター 首席研究員
確率モデリング研究チーム長


注目!コンテスト形式でベンチャー支援!

AI社会実装に向けたスタートアップ支援

NEDOは、AI技術の利活用促進と社会実装の加速を目指し、スタートアップ企業の研究開発を支援する取り組みとしてAIコンテストを開催しています。

採択時にはスタートアップ企業のサービスや製品、試作品のデモンストレーションによるパフォーマンス審査を実施し、AI技術の社会実装の実現可能性を多角的に評価しました。

採択後は人材確保、ベンチャーキャピタルからの出資、企業とのビジネスマッチングを目的とするピッチイベントを開催するなど、新規需要創出や既存分野との融合による産業競争力の強化を図っています。

次世代のAIスタートアップ企業を発掘「HONGO AI」

2019年度は、AI技術の利活用が民間により活発に行われる段階への移行期間と位置付け、HONGO AI事務局と共に、優れたAIスタートアップ企業を表彰する「HONGO AI 2019」を開催しました。コンテスト当日は書類選考と面談選考で選ばれた受賞企業14社がピッチを行い、「HONGO AI BEST AWARD」と「経済産業省産業技術環境局長賞」を決定。選考委員による講演やスポンサーによる表彰等を実施しました。14社はベンチャーキャピタルからの投資の機会や大手企業とのマッチング等の事業支援を受けることができました。

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2019年度のHONGO AI BEST AWARDおよびSibaZiba賞を受賞したMI-6株式会社。

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モデレーターによるパネルディスカッション「世界から見た日本のAIスタートアップ」。

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