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特集1 未来を広げるAI・ロボットのNEXTステージ

生産年齢人口の減少における産業の国際競争力の維持・向上、サービス分野の生産性向上等、重要な社会課題に対する有効なアプローチとして人工知能(AI)やロボットの活用が期待されています。NEDOは2015年度から「次世代人工知能・ロボット中核技術開発」プロジェクトに取り組み、革新的なAI・ロボット技術の研究開発を推進しています。

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NEDOウェブサイトでパンフレット公開中
https://www.nedo.go.jp/content/100902378.pdf

少子高齢化が進む日本が目指すべきこと

2015年、国は「ロボット新戦略」で、「次世代に向けた技術開発」のアクションプランを示し、革新的な次世代技術の研究開発を推進することが必要であるとしました。これを受け、NEDOは、それまでの人工知能(AI)・ロボット関連技術の延長上にとどまらない、人間の能力を超えることを狙う革新的な要素技術を研究開発しようと、同年「次世代人工知能・ロボット中核技術開発」プロジェクトを開始しています。

さらに、これまでAI・ロボットの導入について考えもつかなかった分野での新たな需要の創出や、日本が強みを有する分野との融合による産業競争力の強化につなげていくことを目指しています。

NEDOロボット・AI部専門調査員で、本プロジェクトのプロジェクトマネージャー(PM)を務めた渡邊恒文は、「人間を超える、または匹敵するセンサーやアクチュエータ等のロボット要素技術、実世界に埋め込まれるAI技術のみならず、AIとロボットを融合した技術開発を行ったことがこのプロジェクトの特徴です」と語ります。

本プロジェクトで新たに研究開発したAI技術により、従来の産業用ロボットでは難しかった多品種少量生産の作業を自動化。また、学習作業を簡単にすることにより低コストで実現したほか、食品加工等で課題であった不定形物の取り扱いが可能になりました。

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単独の研究成果や複数の研究成果をさまざまな視点から整理・俯瞰・分析することで、新たな研究のシードとなることが期待される「次の技術」、また、研究成果を社会実装に利活用するためにまとめた「使える技術」の2つを出口とする。

日本の強みを生かす実世界AI

プロジェクトリーダー(PL)を務めた産業技術総合研究所人工知能研究センター長の辻井潤一氏は、「実世界の各分野で優れた組織と人材を保有する日本は、実世界AIを推進する良い環境を持っています。その強みを生かすには、いかに実世界に埋め込まれるAI、人と協調できるAIを生み出せるかが鍵でした。多様な応用分野でのデータ取得技術、認識技術や推論技術、さらに実世界での行動に結びつける技術を開発し、一連のモジュール群として公開しており、これらの技術は世界水準に達していると自負しています」と力を込めます。

AIやロボットの社会実装を加速

2015年度から2019年度までの5年間で、合計126テーマにおよぶ研究開発により世界初を含む数多くの成果を生み出した本プロジェクトでは、「次世代人工知能を搭載した6種類のロボットの実現可能性を示す」という当初の目標を大幅に上回る11種類を示しただけでなく、これから取り組む課題も明らかにしました。そこでNEDOは、AIの社会実装のより一層の加速に焦点を当てたプロジェクトとして「人工知能技術適用によるスマート社会の実現」を2018年度から、AIと人がそれぞれの得意領域で役割分担し、協働して共に進化する世界を目指した「人と共に進化する次世代人工知能に関する技術開発事業」を2020年度から開始。「新型コロナウイルスで社会環境が大きく変わった今、AIやロボットは、さらなる活用が求められます。そのためにも、企業単独はもちろん、業界が集まって協調領域、競争領域を明確にしながら、一丸となって世の中を変えていく取り組みが、ますます必要になるでしょう」と渡邊PMは話します。

AIやロボットに関する市場やニーズの変化が加速する中、要素技術開発だけではなく、社会実装に必要なさまざまな観点で、関係省庁や各機関とも連携しながら、大きな可能性に取り組んできた「次世代人工知能・ロボット中核技術開発」プロジェクト。次ページからは、本プロジェクトで生み出された具体的な成果についてご紹介します。

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渡邊 恒文
NEDO
次世代人工知能・ロボット中核技術開発
プロジェクトマネージャー
ロボット・AI部 専門調査員
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辻井 潤一 氏
NEDO
次世代人工知能・ロボット中核技術開発
プロジェクトリーダー
国立研究開発法人産業技術総合研究所
人工知能研究センター センター長
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