Focus NEDO

外観検査設計を自動化「作る前に品質を決める」を実現

「新たな製造ノウハウの構築に関するデジタルソリューション開発」1位受賞者に聞く

NEDOは2026年5月27日、「NEDO懸賞金活用型プログラム」の「NEDO Challenge, 製造業DX 製造技能の伝承・新たな製造ノウハウの構築をデジタルで実現せよ」のコンテストを開催しました。高齢化が進む熟練者の製造技能の伝承を支援するデジタルソリューションと製造工程の革新や製造システムの開発・導入を通じて新たな製造ノウハウの構築を促進するデジタルソリューションの提案を募集し、コンテスト上位者に懸賞金を交付しました。 本事業で設けた2つのテーマのうち「新たな製造ノウハウの構築に関するデジタルソリューション開発」のコンテストで「『作る前に品質を決める』外観検査設計の自動化ソリューション」を提案し、1位を受賞した株式会社PFU BIRDIEプロジェクトの担当者に話を聞きました。

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株式会社PFU 事業開発本部 次世代事業開発センター 谷崎裕紀氏(左)と平井義人氏(右)

現物依存の常識を覆す。作ってからではなく、作る前に品質を決める。

――今回受賞した外観検査設計の自動化ソリューションはどのようなものですか。
平井氏 製造業の工程は製品の設計と製造に大きく分けられ、製造工程構築においては品質検査設備の開発も行われています。これまでの設計工程には製品の欠陥を検証するツールが無く、設計書に「傷無き事」と注意書きするという曖昧な品質基準で製造工程へ依頼していました。曖昧なために設計と製造とで品質の認識に齟齬が生じ、その結果、お客様のところで予期せぬ不具合が発生する事もあります。その対応のため、設計変更によるコストの増加や、不具合発生による信用の失墜につながっていました。また、不具合を製造工程内で食い止めるための検査設備の開発は、製造加工された現品をもとにした熟練の職人技による不具合検出を行うことが求められます。くわえて、案件ごとの特注対応が必要となり、導入が進みにくい状況でした。

このように、設計では現物が無いので外観品質を設計対象ごとに検討する事が難しく、検査設備の開発では現物をもとに曖昧な品質基準を満たす装置を作る事が難しい、といった現状があり、「作ってから品質を決める」現物依存が製造業の常識でした。私たちはこの当たり前を覆す「作る前に品質を決める」ソリューションの開発に取り組みました。

谷崎氏 本ソリューションのコンセプトを一言で言うと、検査の判断基準となる情報をデジタルツインでつなぐプラットフォームです。具体的には、製品設計の情報をもとに外観不良の3Dモデルを作成して品質基準を具体化し、後工程の検査設備の設計につなげる仕組みです。

特徴として、製品の設計段階では、設計者がチャット形式のUIを通じて、不良のリスクや許容値を検討します。過去のナレッジをもとに発生し得る外観不良を想定し、その形状を物理シミュレーションで再現することで、従来は困難だった多様な欠陥モデルを3D CAD上に自動生成できます。

さらに、そのモデルを光学シミュレーションに取り込み、実際の検査時の見え方に近いCG画像を生成します。これにより、検査に適した照明やカメラの構成・条件の検討から、画像検査モデルの生成、精度評価までをバーチャル空間上で行うことができるようになります。

このソリューションの中核には、PFUがこれまでドキュメントスキャナーの開発で培ってきた、光学・画像処理技術が活かされています。

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開発したプラットフォームのデモ画像(予測した欠陥形状を3Dモデル上で再現:左図、数ある選択肢の中から検査設備を構築:右図)

社会的意義は何か。誰に、どんな価値を届けるのか。視野がさらに広がった。

――NEDO懸賞金活用型プログラムの応募動機を教えていただけますか。
平井氏 BIRDIEプロジェクトの前身となるプロジェクトを推進するなかで、検査の領域、とりわけ外観検査のビジネスが一品一様の個別対応モデルで非常に属人的なものであることが分かりました。これに対して、私たちの技術を用いて効率化するツールを開発できないかと考えたのが始まりでした。

谷崎氏 私たちは、BIRDIEプロジェクトが社会的に意義あるものであり、製造業界の貢献につながるものだと確信していました。一方で、当社にとっては新規事業の領域であり、そこにニーズがあることの裏付けが十分に取れていない状況でした。

2025年度に当社のRAPTORプロジェクトがNEDO懸賞金活用型プログラムで受賞し、社会的な評価を受けて、社内での認知や経営としての重要性が高まったことから、本プロジェクトにおいても適合する課題を見つけて応募したいと考えました。私たちの取り組みを世の中の誰からみても必要だと思っていただき、プロジェクトとしてさらに活動を広げていきたいという思いで挑戦しました。

――NEDO懸賞金活用型プログラムに参加した感想を教えていただけますか。

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平井氏 応募動機にも掲げたように、参加するからには是が非でも受賞して、自社内での認知や経営としての重要性を認識していただきたいと思っていました。コンテストでの評価指標をよく理解することで、日本の製造業の国際的な社会的意義と国家的意義は何かということを深く考え、どうしたら第三者にも伝えられるかを意識し、プログラムのメンターの方々とも議論を重ねました。例えば展示会出展で直接の関係者へのヒアリングにとどまらず、未来の労働力である学生にも、熟練者の数が減る将来の教育問題に対して、私たちのソリューションが期待できるものなのか、期待を抱くためにはどういったものであればよいかをヒアリングも、この活動の一環として行いました。

このように多角的な視点からコンテストに向けての準備を進めたことが、今回の評価につながったのではないかと考えています。

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谷崎氏 BIRDIEプロジェクトの活動以外では、他社の取り組みからさまざまな学びを得ることができました。我々と同じように外観検査という領域を対象としながらも、異なるアプローチで課題解決に取り組んでいる事例がありました。

また、地元企業のDX推進を目指す取り組みなどもあり、テーマや課題への切り口は異なっていても、それぞれがどのような形で製造業に貢献しようとしているのか、その考え方を幅広く学ぶことができました。

社会実装には障壁がある。だからこそ乗り越える策を考える。

――受賞後の反響はいかがでしたか。

谷崎氏 社内外ともに確かな反響がありました。
社内では、BIRDIEプロジェクトのことをよく知らなかった方たちにも興味を持ってもらうことができました。さらには、取り組む内容が社会的意義のあるものであるということが伝えられたことが大きいと考えています。社長にも所属長と二人で報告を行い、喜びの声をいただきました。

その後の社外のお客様とのヒアリングではより共感が得られ、深い議論ができるようになりました。NEDOという公的機関から評価をいただいたことはプロジェクトの価値が確かであることの裏打ちになっていると感じています。

――産業構造を変革する、今後の展望について教えてください。
谷崎氏 BIRDIEプロジェクトは製造業の産業構造の変革につながる価値あるものだと考えています。一方で、私たちが開発するソリューションを社会に浸透させることが難しいということも理解しています。私たちのソリューションで、設計段階で検査設備の具体的な設計検討まで自動化することができますが、この設計案を最終的にカタチにするのは後工程にいる検査設備開発者です。前工程には製造者がいて、さらにその前段に製品不良の判断基準に責任を持つ製品設計者がいます。つまり、製品の設計から製造、検査まですべての工程にソリューションを導入していただく必要があります。しかし、現在の製造業界の慣習として、これらは縦割りで行われている現状があり、このことが大きな導入障壁になると想定しています。

しかし、この構造が「作ってから品質を決める」という現物依存の考え方を生み出しており、顧客損失へとつながっています。これを覆すために現在の障壁を確かめつつ、乗り越えるためには何をすべきかを考えています。

平井氏 はじめから全ての工程に一足飛びに浸透させるのは難しいと思っているので、まずは狭い領域で価値を出しながらスケールを大きくしていきたいです。例えば、製造と検査の二工程の連携を強化して効率化を実現し、効果を認めてもらうことから始めていくなども考えられます。

そして、導入障壁を下げていくことも重要だと考えています。
開発したソリューションを導入することで、検査に関連する業務が製品設計者に負荷として追加されますし、各工程での導入コストが必要になります。そのため、使用者の負担をできるだけ小さくする思想を持ったソリューション開発を継続するとともに、現場へ魅力を届けるだけでなく、経営層の方々へも将来的なコスト削減のメリットを説明していきます。導入障壁を下げながら、製造業界の関係者にソリューションの社会的意義を発信し続けることで、少しずつでも理解を深めてもらい、社会に浸透させたいと考えています。

懸賞金活用型プログラム、受賞のカギは。

――これからNEDO懸賞金活用型プログラムに挑戦する方へのメッセージをお願いします。
平井氏 私たちのBIRDIEプロジェクトのような新規事業は、社外の第三者、とりわけNEDOのような公的機関の評価をいただくことが非常に大事だと考えています。私の座右の銘は「使えるものは何でも使え。」です。成し遂げたい事のために使ってはいけないもの、使うべきものを思考しつくす事が前提ですが、事業を継続して推進するためにも、活用をおすすめできるプログラムだと思います。

谷崎氏 私はコンテストへの取り組み方が大切だと考えています。定められたテーマの本質を根っことして捉えながら、求められる社会的意義は何なのかに着目して何度もブラッシュアップしていけたことが評価につながったと思っています。もちろん、事業のスケールやプレゼンテーションの準備も重要と捉えていますが、今後挑戦される方々へはこの点を特に強調して伝えたいと思います。

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