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懸賞金8億円「GENIAC-PRIZE」、最終審査・表彰式を開催

全国各地から応募多数、課題解決型のAIエージェントが集結

NEDO懸賞金活用型プログラム「GENIAC-PRIZE」の最終審査と表彰式が、2026年3月24日に東京・神田明神ホールで開催されました。GENIAC-PRIZEは生成AIの研究開発・社会実装の促進を目的に、経済産業省とNEDOが立ち上げたプロジェクトです。

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「GENIAC-PRIZE」最終審査と表彰式の会場

今回、生成AIによって解決が望まれる社会課題・官公庁課題・安全性の3領域で、4テーマを設定。テーマに即したニーズに基づくAIサービスを全国から募集しました。厳正なる審査を経て成果に応じた懸賞金を受賞者に授与するもので、懸賞金の総額は8億円に及びます。

具体的には、領域01「国産基盤モデル等を活用した社会課題解決AIエージェント開発」、領域02「官公庁等における審査業務等の効率化に資する生成AI開発」、領域03「生成AIの安全性確保に向けたリスク探索及びリスク低減技術の開発」の3領域を設定しました。このうち領域01については、生成AIによる経済インパクトが大きく期待できる「Ⅰ.製造業の暗黙知の形式知化」「Ⅱ.カスタマーサポートの生産性向上」の2テーマを設けました。

反響も大きく、領域01のテーマⅠには58件、テーマⅡには56件の計114件、領域02には37件、領域03には41件の応募が全国各地から寄せられました。今回のイベントでは領域01の最終候補者が会場でピッチを実施し、その場での最終審査を経て受賞者を決定しました。事前に審査が終了していた領域02、領域03の表彰式も行われ、AIの社会実装を担うキープレーヤーが一挙に集結。ホール前のホワイエでは関係者が交流を深める姿が多数見られました。

領域01の受賞者決定、1位は懸賞金5000万円

領域01の最終候補者ピッチには、テーマⅠ・テーマⅡともに8チームずつ、計16チームが登壇しました。ほとんどのチームがユーザー企業と開発企業のタッグでプロジェクトを進めているのが特徴で、現場のユースケースに沿った課題解決型のAIエージェントを提案。企業規模はスタートアップから中堅、大企業までと幅広く、内容も多岐に渡りました。

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最終候補者ピッチを終えて決定した領域01のテーマⅠの受賞者

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最終候補者ピッチを終えて決定した領域01のテーマⅡの受賞者

領域01では、国産基盤モデルを活用したAIエージェントの開発・実証が必須です。これにより、国産基盤モデルと一体化した“AIとハードの融合”を図り、国内AI市場の強化を支援します。

テーマⅠ「製造業の暗黙知の形式知化」の根底には、国内製造業における熟練工の技術継承問題があります。熟練工が蓄積してきた暗黙知を生成AIの利活用によって形式知化し、次世代へとつなぐことが狙いです。テーマⅡ「カスタマーサポートの生産性向上」は、高い離職率や採用難による人手不足の解決や、カスタマーサポートの生産性向上を目的としました。

審査項目は「ユースケースの波及効果」「ユーザーの変革」「AIエージェントプロトタイプの優位性」「実証成果」「国産基盤モデル開発への貢献」「公共性」「市場開拓」で構成し、顧客と深く関わるテーマⅡのみ「顧客視点」を追加。これらの項目に基づき、テーマⅠ・テーマⅡの1位〜3位を決定しました。受賞者と開発内容は以下の通りです。

Ⅰ.製造業の暗黙知の形式知化

●第1位(懸賞金5000万円)
ダイキン工業株式会社/Fairy Devices株式会社
「熟練者の代わりに作業者を支援するAIエージェントの開発」

3000時間の作業動画から構築したVLM(Vision-Language Model:視覚言語モデル)などの基盤モデルを活用。Fairy Devices社が提供するウエアラブルデバイス「THINKLET」を通じて作業をリアルタイムに解析するAIエージェントを開発。現場のPoCでは高い検知精度と親和性を確認しており、作業の抜け漏れを自動チェック・通知することで、現場の負荷軽減と品質向上を実現しました。

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第1位受賞を受けてコメントするダイキン工業株式会社/Fairy Devices株式会社

●第2位(懸賞金4000万円)
三菱重工業株式会社/株式会社Algomatic
「Tig溶接技術を例にした熟練者・非熟練者の作業動画の”比較”アプローチによる暗黙知の形式知化」

熟練者と非熟練者の作業動画を撮影してアップロードするのみで完了するAIエージェント。今回は機械化が難しいTIG(Tungsten Inert Gas)溶接の技術を選択しましたが、技術の特性に応じて熟練者と非熟練者の作業における“違い”をテキスト情報に限らない形式知化された暗黙知として抽出可能。蓄積された暗黙知を活用し、他作業者の技術評価・フィードバックも行えます。

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三菱重工業株式会社/株式会社Algomaticのピッチの様子

●第3位(懸賞金3000万円)
NanoFrontier株式会社
「LLMを活用した実験自動化」

化学実験室の暗黙知を形式知化し、有機ナノ粒子のアプリケーション開発を加速するAIエージェント。公開論文・知財や商談議事録からテーマ・用途仮説を立て、補助金公募も抽出。探索空間をシミュレーションで絞ることで、LLMが実験目的→手順書→ロボット実行プロトコルへ変換し、24時間無人で実験について計画→実行(ロボット活用)→評価→再計画を回し続けるのが特徴。実験ログを学習資産化し、実験の再現性も高めます。

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NanoFrontier株式会社のピッチの様子

Ⅱ.カスタマーサポートの生産性向上

●第1位(懸賞金5000万円)
株式会社未来都/newmo株式会社
「タクシー配車業務のAI音声対応」

電話によるタクシー配車AIエージェント「maido」を対象に、国産音声合成モデル(VoiceCore)を用いた音声体験品質の検証を実施。maidoはすでに本番環境で稼働しており、従来取りこぼしていた着信を100%受電、AIによる対応完結率も向上。本検証では音声のみを切り替え、社内被験者によるブラインドテストを通じて音声の自然さや受容性を評価。国産AI音声モデルの実用性を実証しました。

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第1位受賞を受けてコメントする株式会社未来都/newmo株式会社

●第2位(懸賞金4000万円)
東洋船舶株式会社/株式会社JDSC
「船主支援のAI番頭。メールと社内文書を資産に変える!」

船主業務の属人化や知見継承不足の課題を解決するためにLLMとRAGを活用した「AI番頭」を導入。メールなどの非構造データから情報を横断的に検索・要約・集約し、エージェント機能で情報収集から分析・判断までを自律的に実行。既存メールシステムと連携して抽出結果を自動共有することで、誰もが書庫やデータベースの奥底に眠る知識を活用し、信頼ある判断を迅速に実現。業務効率と意思決定の質を大幅に向上させ、属人化を排除し業務を標準化しました。

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東洋船舶株式会社/株式会社JDSCのピッチの様子

●第3位(懸賞金3000万円)
一般財団法人在宅がん療養財団/株式会社シャルクス
「がん相談エージェント『ランタン』:あなたは一人ではありません」

夜道を彷徨うようながんを患う人に、足元を照らす治療とケアの選択肢を示すAIエージェント「ランタン」を開発しウェブ上で公開。信頼性の向上に薬剤師の実証で薬品名ハルシネーションを減少。また横浜市と連携して開発した377万市民のための地域版エージェント「よこはまランタン」の改善と利用推進を進めており、自治体DXのモデルとしています。

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一般財団法人在宅がん療養財団/株式会社シャルクスのピッチの様子

第2回GENIAC-PRIZEもスタート

テーマⅠの審査員長を務めたソニーグループ チーフテクノロジーフェローの北野宏明氏は「GENIAC-PRIZEは非常に重要なイニシアチブ。懸賞金型にすることで多数の応募があったことは大きな成果であり、製造業の現場にAIを導入するインセンティブになったと思います」とコメント。そのうえで日本の強みである現場力を活かし、物理世界やロボティクスと連動するフィジカルAIを発展させていくことが国内の産業を押し上げる要因になるとの見方を示しました。

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テーマⅠの審査員長を務めたソニーグループ チーフテクノロジーフェローの北野宏明氏

テーマⅡの審査員長を務めた東京大学大学院工学系研究科 人工物工学研究センター/技術経営戦略学専攻 教授・AI戦略会議 座長の松尾豊氏は「社会全体へのAIの普及がこれから必要になってきます。受賞者の方々、そして会場に集まった方々が一丸となってAIを社会全体に広げていく。それによって人びとの暮らしや社会を良くしていくことに期待しています」とエールを贈りました。

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テーマⅡの審査員長を務めた東京大学大学院工学系研究科 人工物工学研究センター/技術経営戦略学専攻 教授・AI戦略会議 座長の松尾豊氏

領域01ではそのほか、地域賞と特別賞(AIエージェント賞、ユースケース波及賞、ユーザー変革賞、持続実装賞)が授与され、地域の中小企業や大学、スタートアップなどが各賞を受賞しました。一般社団法人 日本ディープラーニング協会 専務理事の岡田隆太朗氏は「ここまで全国からベストプラクティスが集まることは初めて。GENIAC-PRIZEは“実践している方々を褒める”素晴らしい仕組みであり、だからこそこれだけの事例が集まったと考えています。皆さんのイノベーションを手本として、各地から新たな取り組みが生まれるのではないでしょうか」と地域賞を講評しました。

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官の課題に挑んだ領域02「官公庁等における審査業務等の効率化に資する生成AI開発」の特別賞受賞者。(1~3位の受賞該当者はなし)

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領域03「生成AIの安全性確保に向けたリスク探索及びリスク低減技術の開発」の受賞者。第1位はNTT西日本株式会社(懸賞金7000万円)。第2位はNTTドコモビジネス株式会社(懸賞金5000万円)。第3位はトレンドマイクロ株式会社(懸賞金3000万円)。

2026年度のGENIAC-PRIZEについては、2026年5月頃に新たなテーマでの募集が始まります。NEDOでは今後も、皆様のご応募をお待ちしています。

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