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極限マテリアル-極限化が切り拓く「技術の地平」と新市場創出-

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もし、地下のマントル深部のような超高温・高圧にも耐える材料や、ネオジウム磁石を超える超強力磁力を発生する部品があったら――

今、機能特性が極端に高度化された「極限マテリアル」が注目を集めつつあります。ここでのマテリアルとは、素材や部材のみならず部品、デバイスなども含む総称であり、極限マテリアルとはその名の通りマテリアルの性能を極限まで高めたものを指します。極限マテリアルの代表例を挙げると、通常の金属では溶けてしまうような数千度の高温に耐える構造マテリアル、超強力磁石をはるかに超える磁力を発生する電磁気マテリアルなどがあります。従来の常識を打ち破る、まるでSFの世界から飛び出したかのような極限マテリアルに、複雑化する社会課題の解決を通して将来の人類社会の救世主になる産業技術として大きな期待が寄せられています。

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、日本のマテリアル産業のグローバルな競争力を維持・強化し、持続可能な社会の実現に向けた基盤技術の確立に貢献するため、極限マテリアルの開発に取り組んでいます。NEDOは極限マテリアルの分野を「フロンティア領域」と位置付け、2025年に技術の地平を切り開くような研究開発プロジェクトを公募し、多様な研究の支援を開始しています。極限マテリアルは、航空宇宙産業やエネルギー効率化などにも直結し、環境問題や防災、さらにはカーボンニュートラル実現に貢献する技術革新の鍵となるため、持続可能な社会と産業の未来を切り拓く重要な柱となります。

機能の極限化により従来に無い新たな世界が拓ける

極限マテリアルの例としては、高温超電導導体やセラミックス基複合材料、超高性能光学マテリアルなどがあります。例えば、液体窒素温度で電気抵抗ゼロを実現する高温超電導導体は、超強力磁力を効率的に実現できることが期待されています。従来を超える高温・高圧環境に耐える複合材料は、ロケットなどに使用されることで耐熱性や耐放射線性等を実現し、宇宙開発の安全性を飛躍的に向上させる可能性があります。軽量かつ高強度な材料は輸送機器を軽くし、脱炭素社会への移行を加速する力にもなるでしょう。また、光学マテリアルの超高性能化によりパワーレーザーの格段の高出力化が可能になり、様々な加工・切断の抜本的効率化や小型化など、レーザー技術の新たな応用展開の拡大に寄与することが期待されています。

極限マテリアルは、従来の技術の常識を覆して新たな技術世界を切り拓く可能性を有し、持続可能な社会の構築や新ビジネスの創出にもつながることが期待されます。人類が直面するこれまでの技術的制約を極限マテリアルが打ち破り、社会課題の解決につながる不可欠な技術として今後ますます注目を集めていくことになるでしょう。

2040年に100兆円規模、市場創出の可能性大

市場規模の観点からも、極限マテリアルは重要視されています。NEDOの調査では、極限マテリアルはマテリアル市場全体に占める割合が2022年の5%から2040年には10%にまで拡大する見込みがあり、世界市場は金額ベースで100兆円規模を創出する可能性があります。さらには、技術的発展の面でも極限マテリアル関連の投稿論文数が急増し、直近20年間で年平均10.9%の成長を示しており、世界的な注目を集めています。日本は世界のマテリアル開発の黎明期から研究開発を進めてきた実績があり、国内の大学や研究機関、企業が先頭に立ち、技術革新の実績を挙げてきました。日本の極限マテリアルの市場支配率150%近くあることが NEDOの調査でも分かっており、日本がこの分野で引き続きリードするポテンシャルを示すものと言えるでしょう。

1 Innovation Outlook Ver.1.0, p. 200( https://www.nedo.go.jp/content/800027825.pdf

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