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「NEDO省エネルギー技術開発賞」受賞者の成果を見る

福井県の地場企業フクビが理事長賞、「進むべき道が間違っていないことを再確認した」

「ENEX2026 第50回地球環境とエネルギーの調和展」が、2026年1月28~30日に東京ビッグサイトで開催されました。省エネ・エネルギーマネジメント・カーボンニュートラルを推進する最先端の技術や製品が展示される中、NEDOのブースではさまざまなテーマのパネルや試作品を紹介。出展事業者と来場者のビジネスマッチング機会を設けるなど、社会実装に向けた接点創出にも力を入れました。

「ENEX2026」のNEDOブース

「ENEX2026」のNEDOブース

初日の1月28日には、省エネルギーに寄与する優れた成果をあげた事業者に贈られる「NEDO省エネルギー技術開発賞」の表彰式を行いました。本表彰制度は2018年度から毎年実施しているもので、今回は2025年9月までに終了した研究開発テーマが対象です。

冒頭、NEDOの斎藤保理事長が「2023年4月の省エネ法改正以降、2050年のカーボンニュートラルの重要な一歩として、省エネルギーに関わる技術開発に対する期待が一層高まっています。この表彰を機に受賞者の方々にはさらなる開発を進めていただき、一日も早い社会実装を期待しています」と挨拶。日本の省エネルギーの推進役となってほしいとエールを贈りました。

挨拶に立ったNEDOの斎藤理事長。背後のマークは「NEDO省エネルギー技術開発賞」のロゴマーク

挨拶に立ったNEDOの斎藤理事長。背後のマークは「NEDO省エネルギー技術開発賞」のロゴマーク

理事長賞、中小・スタートアップ賞、ベストコラボレーション賞、イノベーティブプロダクト賞の各受賞者と研究開発内容は以下の通りです。

●理事長賞
フクビ化学工業株式会社
「熱可塑性薄層プリプレグシートを用いた革新的一貫製造プロセスの開発」

NEDOプロジェクト名:脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム

理事長賞のフクビ化学工業株式会社

理事長賞のフクビ化学工業株式会社

●中小・スタートアップ賞
株式会社戸畑製作所
「難燃性マグネシウム合金ダイカストによる自動車用大型部材製造技術の開発」

NEDOプロジェクト名:脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム

中小・スタートアップ賞の株式会社戸畑製作所(左はNEDOの吉田剛理事)

中小・スタートアップ賞の株式会社戸畑製作所(左はNEDOの吉田剛理事)

●ベストコラボレーション賞
株式会社SteraVision
「長距離・広視野角・高解像度・車載用LiDARの開発」

NEDOプロジェクト名:戦略的省エネルギー技術革新プログラム

ベストコラボレーション賞の株式会社SteraVision

ベストコラボレーション賞の株式会社SteraVision

●イノベーティブプロダクト賞
パナソニック ホールディングス株式会社
「脱炭素社会実現に貢献する省エネルギー型内塗装技術開発」

NEDOプロジェクト名:脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム

イノベーティブプロダクト賞のパナソニック ホールディングス株式会社

イノベーティブプロダクト賞のパナソニック ホールディングス株式会社

各受賞者に聞く、今後の展望

表彰式後、各受賞者にプロジェクトの概要や、省エネ効果、今後の展望、ビジネス展開などについて話を伺いました。

●フクビ化学工業株式会社(理事長賞)

福井県福井市に本社を置くフクビ化学工業は、CFRTP(炭素繊維強化熱可塑性プラスチック)の革新的製造プロセスが高く評価されました。

炭素繊維複合材は非金属の高強度部材として各方面から注目が集まっています。CFRTPは熱硬化性のCFRP(炭素繊維強化プラスチック)に比べて成形サイクルが速くリサイクルしやすいメリットを持つ反面、最終製品まで複数社が関与するため工数・コストが増大する課題がありました。

そこで福井県工業技術センターと共同で、新たなCFRTP生産技術の開発に着手。福井県が保有する「繊維を薄く広げる技術」と同社が培ってきた樹脂成形ノウハウを組み合わせ、高強度かつ軽量なCFRTPの一貫製造プロセスを開発しました。

フクビ化学工業によるCFRTPの試作品。薄層プリプレグシート、チョップドシート、Heat&Coolプレス成形による部材品を展示

フクビ化学工業によるCFRTPの試作品。薄層プリプレグシート、チョップドシート、Heat&Coolプレス成形による部材品を展示

具体的には樹脂フィルム、薄層プリプレグシート、チョップドシート、Heat&Coolプレス成形までを1社のみで完結。従来比3倍以上の生産性、一貫生産による低コスト化、環境負荷軽減による省エネを可能にしました。省エネ効果は2030年度に0.25万kL/年、2040年度に8.62万kL/年を見込んでいます。

現時点では、高い賦形性を有するチョップドシートまでの量産体制を確立しました。2026年度中には量産を開始する予定です。CFRTP開発を担当する金森尚哲氏は「直近では、軽量・高強度が求められる電子機器部品で引き合いが来ています。完全な一貫体制を構築することでCFRTPの普及を促進させ、ゆくゆくはボリュームゾーンの自動車部品に展開する予定です」と意欲をのぞかせます。

代表取締役 社長執行役員COOの森克則氏は、これまでのNEDOの支援や今回の理事長賞の受賞に対して「社会的意義や技術的価値を第三者の視点で評価していただけたことにより、自分たちの進むべき道が間違っていないことを再確認しました」とコメント。続けて「未知の領域を切り開く覚悟を持って取り組みを加速させていきたい」と決意を述べました。

フクビ化学工業 代表取締役の森克則氏

「今回の受賞は、福井県の強みである繊維技術と炭素繊維を組み合わせた長年の事業開発が1つの節目に達した成果」と振り返ったフクビ化学工業 代表取締役の森克則氏

●株式会社戸畑製作所(中小・スタートアップ賞)

福岡県北九州市に本社を置く戸畑製作所は、国内外の鉄鋼および非鉄精錬プラント向けの純銅製熱交換・通電部材の製造販売を主力事業としています。そうした中、近年注力しているのが難燃性マグネシウム合金の開発です。

かねて軽量金属としてクローズアップされているマグネシウムは、燃えやすく製造コストが高いとの課題がありました。大型部材ではF1レース用の高価なホイールなどにマグネシウム合金が採用されていますが、さらなる拡大には画期的な量産技術が望まれています。そこで戸畑製作所は鋳造解析に基づく難燃性マグネシウム合金に最適化した鋳造方案を確立。関連設備を含むダイカスト技術を開発し、従来は困難とされてきたホイールの軽量化と低コスト化を実現しました。

戸畑製作所による難燃性マグネシウム合金製品。左が16インチホイール、右が14インチホイール

戸畑製作所による難燃性マグネシウム合金製品。左が16インチホイール、右が14インチホイール

同社ではNEDOの支援を受け、2019年からの実用化開発フェーズ、2022年からの実証開発フェーズと合計6年間にわたり研究開発を実施してきました。実用化開発フェーズの14インチホイール、実証開発フェーズの16インチホイールともに大幅なコスト削減に成功し、14インチホイールを社用車のEV軽自動車に搭載して約1年間使用したところ、約19%という非常に高い燃費向上効果が得られました。

代表取締役社長 松本敏治氏は「マグネシウムホイールの採用によって燃費が1 %向上した場合、2040年までの市場導入数を1379万台と仮定すると年間8.4万kLの省エネ効果を達成できます」と説明。今後は軽自動車から中型車クラスまでをターゲットに段階的にシェアを広げ、「マグネシウムのサプライチェーンにおける仲間づくりにも力を入れていきたい」と語りました。

戸畑製作所 代表取締役社長 松本敏治氏

戸畑製作所 代表取締役社長 松本敏治氏

●株式会社SteraVision(ベストコラボレーション賞)

ベストコラボレーション賞を受賞したSteraVisionは、産業技術総合研究所(産総研)発のベンチャー企業で、代表取締役社長を務める上塚尚登氏が設立。産総研で生まれた「光ステアリングデバイス技術」をもとにした次世代型のLiDARシステムを開発しています。LiDARシステムは自動運転の“目”として不可欠な技術です。

今回評価されたLiDARシステムは、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式の採用により、太陽光やほかのLiDARからの干渉に強く、ロバスト(頑強)な計測が可能。霧や雨などの悪天候下でも高い性能を発揮する全天候型であり、現在主力のTOF方式LiDARと比較して長距離計測でも有利なことから、「コストダウンが進めば究極のLiDARとして普及するに違いない」と上塚氏は述べます。そのうえで「戦略的省エネルギー技術革新プログラムにおけるNEDOの支援がなければ、日本のLiDAR技術が世界から遅れを取った可能性があります。こうした展示会を通じて顧客接点が生まれる効果も大きい」とコメントしました。

SteraVisionによるFMCW方式LiDARシステム

SteraVisionによるFMCW方式LiDARシステム

同社のFMCW方式LiDARシステムはデジタル的に任意の場所を照射できるため、「“見たいところを見たい精度で見る”ことができます」と上塚氏は話します。ワンチップへの集積化も構想しており、「親指サイズまで小型化するのが理想。実現すればLiDARの価格が劇的に下がり、使い捨て可能なレベルになることも夢ではありません」と力を込めました。

省エネ効果としては原油換算で2028年度に3.1万kL/年、2030年度に15万kL/年、2040年には30万kL/年以上の貢献を試算。将来的には車載に限らず、宇宙、ロボット、監視・セキュリティなど幅広い分野への応用が期待されます。

SteraVision 代表取締役社長 上塚尚登氏

SteraVision 代表取締役社長 上塚尚登氏

●パナソニック ホールディングス株式会社(イノベーティブプロダクト賞)

近年、地球温暖化防止の観点から、意匠性は落とさず、より省エネルギーな従来塗装の代替工法が望まれています。そこでパナソニック ホールディングスでは、熱乾燥工程レスによる省エネルギー化が可能な「型内塗装技術」に着目していました。

型内塗装技術はエネルギー使用量が少ない利点があります。一方、車や家電部材の塗装は低コスト・形状対応性の良いスプレー塗装が主流であり、型内塗装の拡大が進んでいません。こうした状況を打開するため、従来塗装と比較してコスト、形状対応性を同等以上にする型内塗装技術の開発に着手。これにより熱乾燥工程レス・工程簡略化・塗料ロス削減といった型内塗装の環境効果を社会全体へ普及・加速することを目指し、本プロジェクトへの参画を決めました。

今回の取り組みでは、型内での薄膜塗装技術の開発、塗料硬化時間の短縮、薄膜塗装時の塗料の金型面の高精度転写、型からの離型性の確保によって低コスト化を実現。また、裏面塗装対応+塗料余剰部の2次加工レス化によって塗装範囲を拡大することで、形状対応性の向上も可能にしました。

国内における原油換算での省エネ効果は、2040年に5.2万kL/年と算出。塗料中の溶剤の熱乾燥が不要となることから、従来技術に比べて約90%の省エネ効果を想定しています。担当者は「プロジェクト公募時の審査のプレゼンや事業期間中のステージゲート審査などを通じて、NEDO関係者による開発内容の妥当性評価や、開発内容に対する客観的視点のアドバイスをいただくことができました」と振り返ります。その結果が自社開発技術に対する改善点や新たな気づきにつながり、社会実装、事業展開を推進するうえで有意義な取り組みとなったようです。

同社では自社および他社のスプレー塗装部品に対する代替化をはじめ、従来のスプレー塗装では難しかった型内塗装ならではの高品位な外観意匠の実現など、省エネ以外でも“型内塗装の強み”を広げていきたいとしています。

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