NEDOは2024年12月より、日刊工業新聞の科学技術・大学面において、「NEDO未来展望~イノベーションを社会へ~」と題し、NEDOが推進しているプロジェクト等について、その概要や特徴、目標、現時点での成果等をプロジェクト等の担当者が執筆・紹介しています(年末年始を除く毎週水曜日に掲載)。当Web Magazineではバックナンバー記事を掲載します。
【95】循環型バイオ産業創出(2026年10月14日紙面掲載分)
原料に早生樹
バイオテクノロジーの力で、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)を目指しつつ経済成長も実現する経済活動、「バイオエコノミー」への期待が高まっている。既に、二酸化炭素(CO2)や植物由来の再生可能資源から燃料や化学品、食品素材などを生み出す技術開発が急速に進んでいるが、社会実装に向けて見落としてはならない課題がある。それは「原料を安定的に確保できるか」という点だ。
どれほど優れたバイオものづくり技術があっても、原料供給が不安定では産業として成長しない。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では、バイオマス発電のサプライチェーン(供給網)構築の一環として国産バイオマス資源の安定供給に向けた早生樹(そうせいじゅ)栽培の実証事業を進めている。
岩手県内で、亜寒帯でも短期間に成長する早生樹の選定、立地・栽培条件の検証、大量生産に向けた苗の栽培技術開発、高効率な伐採・収穫システムの検証などを行うものだ。こうした取り組みをバイオ産業につなぎ、地域の特性を生かしながら再生可能な植物資源の計画的生産を実現するとともに、地域内でサプライチェーン・バリューチェーンを形成することが重要になる。
地域特有の再生可能資源を基盤とした循環型バイオ産業モデル
(北海道における「てんさい産業」を事例として)
副産物を活用
一例として、北海道の「てんさい産業」がある。てんさいは輪作の主な作物として大規模栽培される。砂糖の原料としてだけでなく、副産物である糖蜜が発酵産業にも活用できる、用途が広い農産物だ。畜産業と連携した循環型のサプライチェーンの形成にも資する一方、近年は微細藻類による油脂生産やマイコプロテイン製造など新たな活用法も始まっている。
他の例として、バレイショ由来のでん粉産業の高度化や、高いバイオマス生産性を持つソルガムの社会実装、ほぼ輸入に頼っている松脂(ロジン)やカンゾウ(グリチルリチン)の国内生産、ハッカ産業の再興などにも期待がかかる。
地域で価値生む
もちろん、バイオエコノミー普及のためには、原料の安定的確保に加え、加工産物の高付加価値化、副産物・残渣(さ)などの有効活用なども課題だ。これらをまとめて解決するためには、地域で資源を生み、地域で加工し、地域で価値を生み出す「地域循環型バイオ産業」の創出の視点が重要と考える。農業、林業、食品・発酵産業、化学産業、自治体、研究機関が連携し、地域のブランド価値として磨き上げることで、新たな雇用や投資も呼び込めるだろう。NEDOも地域資源発のバイオイノベーションが日本の強みとなり、未来を変える日が来ることを後押ししていきたい。
関連ページ
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NEDO
イノベーション戦略センター(TSC)
バイオエコノミーユニット 上席研究員
鈴木 馨(すずき かおる)
1991年東北大学理学研究科修了(理学博士)。翌年工業技術院微生物工業技術研究所(現産業技術総合研究所バイオものづくり研究センター)入所。植物の生産性や環境ストレス耐性の向上に資する研究開発、企業との大型連携開拓、地域イノベーション創出に向けた産学官連携推進等に従事。2025年から現職、植物資源を基盤とした持続的バイオ産業を中心にバイオエコノミー関連技術分野を担当。