Focus NEDO

NEDOは2024年12月より、日刊工業新聞の科学技術・大学面において、「NEDO未来展望~イノベーションを社会へ~」と題し、NEDOが推進しているプロジェクト等について、その概要や特徴、目標、現時点での成果等をプロジェクト等の担当者が執筆・紹介しています(年末年始を除く毎週水曜日に掲載)。当Web Magazineではバックナンバー記事を掲載します。

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【86】海中CO2回収 導入推進(2026年8月5日紙面掲載分)

コスト減期待

大気中の二酸化炭素(CO2)は濃度が約420ppm(ppmは100万分の1)、総量が約3300ギガトン(ギガは10億)である。これに対し、海中には濃度で大気中の約120倍、総量で約50倍ものCO2が存在する。海中のCO2を除去すれば、大気中のCO2は平衡反応で海中に吸収され、大気から除去される。大気から直接CO2を回収するDAC(ダイレクト・エア・キャプチャー)はCO2濃度の低さがコスト増の要因となっているが、海中は大気よりCO2濃度が高いため、回収コストの低下が期待できる。

材料技術がカギ

CO2除去技術(CDR=カーボン・ダイオキサイド・リムーバル)は、自然が本来持つ機能を活用する自然ベースアプローチと人工的に行う工業的アプローチに大別できる。

一般に工業的アプローチは自然ベースアプローチに比べ、CO2除去量の潜在的なポテンシャルが大きく、化学プロセス主体のためCO2固定の定量性や恒久性で優位である。日本には優れた材料技術がある。これを活用し、工業的アプローチで従来のDACを凌駕(りょうが)する低コスト化が実現できないかと考え、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のフロンティア育成事業で「海洋CDRの工業的技術開発(低コストCO2回収技術)」のプログラムを立ち上げた。

研究開発によるメリットなどを図にまとめたが、直接海洋吸収(DOC=ダイレクト・オーシャン・キャプチャー)は国内における研究開発による発展が最も期待される技術だ。具体的には、電気透析や電気分解で生成した酸を用いて海水中のCO2を放出させる技術による低コスト化や、海水から直接CO2を回収する画期的な材料や膜の開発が期待される。

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CO2回収・貯留技術の除去ポテンシャル[GtCO2/年]、技術成熟度および投資効果

既存施設を活用

日本では冷却などのため、既存産業において海水をくみ上げる施設が整備されている。火力・原子力発電所、石油精製・化学プラント、製鉄所、海水淡水化施設などに導入されたくみ上げ施設にDOCを導入すれば、揚水や濾過にかかるコストを節約でき、初期導入費の低減につながる。化石燃料由来のCO2を回収・利用するプラントにDOCを導入すれば、さらなるコスト削減が見込める。

将来、プラントの化石燃料使用量が減少し、CO2関連設備に余剰能力が生じた場合には、DOCによるCO2回収量を増やすことで、CO2関連設備をCO2の回収・貯留(CCS)や他産業を含めたカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)な原料・燃料提供の用途で、有効かつ長期間にわたり活用することも期待できる。これらの設備はDACにも活用できるが、回収CO2量に対する必要敷地面積が小さい点でDOCが有利となる可能性がある。研究開発を進めて、DOCによる回収コストをDACより低減させて、早期の市場導入拡大を図りたい。

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NEDO
イノベーション戦略センター(TSC)
環境・化学ユニット 主任研究員
寒川 泰紀(そうがわ やすのり)
1991年東工大院(現東京科学大)原子核工学修士修了。東燃(現ENEOS)入社、太陽電池、低燃費エンジンオイル、自動車燃料の研究開発に従事。2020年にNEDO技術戦略研究センター着任、資源循環やカーボンリサイクルなどのサーキュラーエコノミー関連技術分野を担当。

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