NEDOは2024年12月より、日刊工業新聞の科学技術・大学面において、「NEDO未来展望~イノベーションを社会へ~」と題し、NEDOが推進しているプロジェクト等について、その概要や特徴、目標、現時点での成果等をプロジェクト等の担当者が執筆・紹介しています(年末年始を除く毎週水曜日に掲載)。当Web Magazineではバックナンバー記事を掲載します。
【85】重要元素 安定供給に貢献(2026年7月29日紙面掲載分)
再生利用に注目
レアメタル(希少金属)・レアアース(希土類)などの重要元素は、日常生活から産業に至るまで広く利用され、グリーン・トランスフォーメーション(GX)・デジタル変革(DX)推進に不可欠である。しかし、採掘や製錬が特定国に偏在し、安定供給の確保は決して容易ではない。さらに、将来需要の大幅な拡大が想定されており供給不足の懸念も高まっている。
重要元素の持続的な供給確保に向けた取り組みは、製錬品調達先の多角化や天然資源開発、製錬・加工技術強化など多岐にわたる。中でも、リサイクル(再生利用)は廃製品などを国内資源として活用でき、地政学的影響を受けにくい資源調達手段である。また天然資源からの生産と比較して温室効果ガス(GHG)排出削減や環境負荷低減にも寄与する技術として注目される。
レアアースの生産・製錬国と日本の輸入先
微量分散が課題
金属資源に乏しい日本では、製造プロセスで副産物や中間物を相互利用し、希少金属をムダなく回収する高度な技術を各非鉄製錬メーカーが独自に発展させてきた。高付加価値な貴金属やレアメタルを含有する廃棄物は、このような非鉄製錬ネットワークで鉱物と混合処理されている。こうした取り組みの結果、日本の銅製錬は世界第4位の規模を誇り、大量のリサイクル原料を受け入れ、副産物として複数元素を回収する基盤となっている。
一方、主要金属の副産物である重要元素の生産量は、主産物の生産動向に左右され、需要増に応じた増産が難しい。加えて、不純物を多く含む状態で廃棄される半導体用途などの重要元素は、製品中に微量で複雑に分散しているためリサイクル処理の難度が高く、依然としてリサイクル率は低い。
可変型に期待
こうした廃製品から重要元素を経済的にリサイクルするためには、破砕・選別・抽出による濃縮化前処理のさらなる低エネルギー・低コスト化が求められる。しかし、重要元素は価格変動が大きく、製品開発に伴い要求する組成も変化するため、リサイクルの段階で、安定的に高い付加価値を持つ元素を見極めることは容易ではない。解決策として、元素ごとに個別に構築されるプロセスではなく、前処理プロセスの共通化を図り、多様なリサイクル原料からさまざまな元素を柔軟に回収することができる可変型プロセスの構築に期待がかかる。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では、これまでリチウムイオン電池(LiB)やネオジウム磁石などのリサイクル技術開発を行ってきた。今後、重要元素の範囲を広げ、経済合理性と安定供給を両立する柔軟なプロセスの構築の普及・拡大に貢献していきたい。
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イノベーション戦略センター
環境・化学ユニット 主任研究員
濵田 哲也(はまだ てつや)
1999年九州大学大学院理学研究科博士課程修了後、三井化学入社。機能性材料・合成プロセス開発に従事し、ベンチャー出向後、研究企画管理部で戦略策定・研究企画を担当。2026年NEDO出向。環境・化学分野の研究開発戦略策定とプロジェクト企画に従事。