Focus NEDO

NEDOは2024年12月より、日刊工業新聞の科学技術・大学面において、「NEDO未来展望~イノベーションを社会へ~」と題し、NEDOが推進しているプロジェクト等について、その概要や特徴、目標、現時点での成果等をプロジェクト等の担当者が執筆・紹介しています(年末年始を除く毎週水曜日に掲載)。当Web Magazineではバックナンバー記事を掲載します。

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【83】イノベーション創発促進(2026年7月15日紙面掲載分)

揺らぐ前提

これまで、イノベーションは「創出」するものとして捉えられてきた。将来の市場や技術動向を調査・分析し、有望な領域を見極め、最適な技術を特定して開発へと導く。この一連の活動は、情報収集と分析によって意思決定し、具体的な技術戦略に落とし込む、いわゆる「技術インテリジェンス」である。不確実な環境から最適解を導き出し、創出に向けた一本道を設計する役割を果たしてきた。

しかし現在、その前提が揺らいでいる。技術の進展や分野横断的な連結が加速する中、社会課題は複雑化し、将来を精緻に予測して唯一の解を定めることは難しくなった。仮説検証のサイクルは短期化し、あらかじめ描いた計画に基づく創出モデルだけでは、十分なイノベーションを生み出すことが困難になっている。

「領域」提案へ

こうした中、イノベーションは「創出」から「創発」へとシフトしている。創発とは、多様な主体や技術の相互作用の中から新たな価値が表出する現象である。それは単なる偶然ではなく、一定の条件のもとで生じる構造的なものである。従って重要なのは、この創発を偶然に委ねるのではなく、その前提をいかに整えるかという点にある。

創発を成立させるためには、あらかじめ仮説や文脈を用意し、偶然に意味が宿る状態を提供する必要がある。ここでは、技術インテリジェンスの機能が大きく転換する。従来のように解を特定するのではなく、複数の可能性が意味を持って立ち上がる、幅を持つ「領域」を提案する機能への拡張が必要になるからだ。

具体的には、情報収集・分析あるいは発信に加え、仮説提示や対話、試行を通じて、新たな関係性を生み出す「場」としての機能が重要となる。

サミット開催

NEDOイノベーション戦略センター(TSC)は、「イノベーションアウトルック」を通じて将来の社会像から課題と技術領域を仮説として提示し、それを起点に多様な主体との対話を通じてイノベーションの創発を促す実験を実践している。去る6月15日、イノベーション創発の舞台としてNEDOサミットを開催した。

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NEDOサミットには500人超が参加した

今回の実験は始まりに過ぎない。実験の内容は時代とともに変化する。その姿勢こそがイノベーション創発の前提であると認識し、TSCは、仮説と対話、実践を結びつける技術インテリジェンスのプラットフォームを目指していきたい。

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NEDO
イノベーション戦略センター(TSC) 事務局長
田辺 雄史(たなべ たけふみ)
1997年早稲田大学大学院修了、同年通産省(現経済産業省)入省。サイバーセキュリティー・IT政策に長年従事し、DX(デジタル変革)推進やデジタル人材育成、スタートアップ支援を主導。東京大学では研究セキュリティー体制整備を推進。幅広い海外勤務や留学経験を経て、現職ではTSC全体を統括。米国公認会計士。

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