Focus NEDO

NEDOは2024年12月より、日刊工業新聞の科学技術・大学面において、「NEDO未来展望~イノベーションを社会へ~」と題し、NEDOが推進しているプロジェクト等について、その概要や特徴、目標、現時点での成果等をプロジェクト等の担当者が執筆・紹介しています(年末年始を除く毎週水曜日に掲載)。当Web Magazineではバックナンバー記事を掲載します。

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【81】不純物無害化、再生アルミ活用拡大(2026年7月1日紙面掲載分)

循環破綻を懸念

現下の中東情勢で、石油や天然ガスの安定供給が関心を集めている。ボーキサイトから新地金に精錬する際に大量の電力が必要なアルミニウムも例外ではない。地球温暖化対策に加え、省エネルギーの観点から、より少ないエネルギーでアルミニウムを供給することが重要となる。そこで期待されるのがリサイクルだ。

しかし、スクラップから製造される再生地金は、シリコンや鉄などの不純物混入により強度や延性が低下する。このため、自動車などの展伸材には使用することができず、大半が異種金属混入への許容度が高い鋳造材へカスケードリサイクルされる。将来、スクラップ発生量が鋳造材の需要を上回れば、スクラップが供給過剰となり、アルミニウム資源サイクルが破綻することが懸念されている。

縦型の鋳造機

そこで、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「アルミニウム素材高度資源循環システム構築事業」では、(1)不純物元素低減技術開発(2)微量不純物を無害化する高度加工技術の開発により再生地金の活用拡大に取り組んだ。

このうち、(2)においては「縦型高速双ロール鋳造実験機」を、UACJ、東京科学大学が開発した。この機器は溶湯とロールの接触長が長く、ロール荷重が小さいため、熱伝導性が高い銅製ロールの選定が可能である。さらに、供給部をサイドダム、ノズルを組み合わせてロール上面を囲み、溶湯プールを形成する構造とした。

これにより、溶湯の重さで凝固シェルとロールを密着させる押湯効果が得られる。従来の横型鋳造機にはない設計により、溶湯の冷却・鋳造速度は数十倍に向上した。その結果、溶湯に混入した不純物による晶出物の微細化、分散化が可能となり、アルミニウムリサイクルの課題であった不純物を無害化することが期待される。今回の実験機は200kgの溶湯を用いて幅200mmの薄板を連続鋳造できる。高純度の再生地金の量産化が可能な世界初の機器と言える。

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「アルミニウム素材高度資源循環システム構築事業」の概要

新地金並み特性

実用化に向けては、熱収支のバランスを取った定常状態での安定的な長時間鋳造が不可欠だ。そこで、鋳造運転条件の最適化などに取り組んだ結果、新地金と遜色ない材料特性を持つ再生地金の製造に成功した。

新地金並みの再生地金を製造できる機器の意味するところは小さくない。省エネルギーに加え、製造工程の簡略化による製造時間短縮や設備面積の削減も期待される。アルミニウム製造の大変革をもたらす技術の早期実装を目指していきたい。

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NEDO
サーキュラーエコノミー部
3Rチーム 主査
林 慶輔(はやし けいすけ)
2012年東京理科大学大学院修了、同年三菱マテリアル入社。2024年にUBE三菱セメントよりNEDOに出向。「アルミニウム素材高度資源循環システム構築事業」を担当し、アルミニウム分野のアップグレードリサイクル技術開発支援に従事。

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