Focus NEDO

NEDOは2024年12月より、日刊工業新聞の科学技術・大学面において、「NEDO未来展望~イノベーションを社会へ~」と題し、NEDOが推進しているプロジェクト等について、その概要や特徴、目標、現時点での成果等をプロジェクト等の担当者が執筆・紹介しています(年末年始を除く毎週水曜日に掲載)。当Web Magazineではバックナンバー記事を掲載します。

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【79】植物バイオものづくり推進(2026年6月17日紙面掲載分)

脱炭素に貢献

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発」事業において、植物を用いて高効率に有用たんぱく質を生産する技術の開発を推進している。植物による物質生産は、その工程で光合成を通じて二酸化炭素(CO2)を吸収するため、炭素循環型社会の構築への貢献が期待されている。医薬品原料などの製造では、従来技術に比べて初期投資や運転コストを抑えやすいという点でも、世界的に注目されている。

生産性を向上

欧米の植物工場では、生産効率の低さを栽培量で補うため、大規模な工場の建設が進められてきたが、土地の制約がある日本でその戦略をとるのは難しい。そこで同事業では、大規模な植物生産工場と同等の生産能力を、より小規模な施設設備で実現する技術開発に挑み、事業化のハードルを下げることを目指している。これまでに、産業技術総合研究所、横浜国立大学、北海道大学、東京大学、鹿島およびデンカが共同で開発を行い、さまざまな成果を創出している。

具体的には、有用たんぱく質の生産性が従来の4倍高い改変植物を開発した。また、空調や照明など栽培に要する消費電力量の削減を実現しつつ、栽培面積当たりの植物体収量を約3倍増加させる栽培方法も開発した。さらに、大量の植物体から目的物質だけを高回収率・高純度で精製できる生産物分離方法と分離装置の開発に成功した。このように、植物体の開発から目的物質の精製までのプロセス全体を通じて、生産性の向上を実現する技術の開発は世界で初めての事例である。

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本事業の成果概要

実装に向けて

技術の社会実装に向けた取り組みも進めている。横浜国大は同事業の成果の発信や、植物バイオものづくりに関する人材の育成を目的に、「プラントバイオ創造拠点」を開所した。同拠点には、同事業で活用・開発した植物への遺伝子導入や栽培に用いる設備、植物体の破砕から目的物質の精密濾過に至るまでの一貫抽出・精製が可能な装置などを整備している。これらを活用し、植物バイオものづくり分野への新規参入企業を主なターゲットとして、人材育成講座や人的ネットワークを広げるための情報交換会を開催している。これらの取り組みを通して、植物バイオものづくり技術をコアとする新規産業の創出と既存産業の高度化を図っていく。

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NEDO
バイオ・材料部
スマートセルチーム 主任
木下 理子(きのした りこ)
2020年東北大学大学院生命科学研究科博士前期課程修了、同年NEDO入構。評価部(当時)にて、終了したNEDOプロジェクトの追跡調査を担当したのち、材料・ナノテクノロジー部(当時)にて、「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発」を担当。2024年から現職。同事業のプロジェクトマネージャー。

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