Focus NEDO

NEDOは2024年12月より、日刊工業新聞の科学技術・大学面において、「NEDO未来展望~イノベーションを社会へ~」と題し、NEDOが推進しているプロジェクト等について、その概要や特徴、目標、現時点での成果等をプロジェクト等の担当者が執筆・紹介しています(年末年始を除く毎週水曜日に掲載)。当Web Magazineではバックナンバー記事を掲載します。

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【78】ブルーカーボン拡大を支援 漁港で藻場造成(2026年6月10日紙面掲載分)

海の砂漠化進行

2024年、日本は世界で初めて自国の海草・海藻藻場における二酸化炭素(CO2)吸収量を算定し国連に報告した。海洋生態系に蓄積される炭素「ブルーカーボン」は、次世代の地球温暖化対策として世界的に注目されている。加えて、藻場は単なる吸収源ではなく、水産生物の産卵や生育を支える「海のゆりかご」として、生物多様性の保全や水産資源の増大に不可欠な役割を担っている。

しかし、地球温暖化が引き起こすさまざまな要因により海藻は激減し、いわゆる海の砂漠化と呼ばれる「磯焼け」が各地で進行しており、場当たり的な対応で藻場を造成することは困難な状況である。

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「つくる、育てる、増やす、測る」の4段階で進めるシステムフロー

5カ所で実証

こうした背景の下、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金では「漁港を利活用した海藻バンクによるブルーカーボン生態系拡大プロジェクト」を支援している。

藻場を造成するためには、いかに気候変動に適応した海藻種苗を安定的に生産できるか、そして藻場の衰退要因に応じた適切な造成技術を提供できるかの2点が重要である。そこで同事業では、全国5カ所の漁港を拠点に、種苗の安定的な大量生産体制を構築するとともに、それら異なる海域環境ごとに適した海藻の着生基盤や移植手法を開発している。

加えて、ドローンと独自の解析技術による効率的な藻場の計測技術を開発し、Jブルークレジット(R)の申請を目指す。現在、これら一連の取り組みをワンストップで提供できる体制を整備し、5漁港の周辺海域で藻場造成の実証に取り組んでいる。

橋渡し役に

今春、事業開始以来初めてとなる藻場が5漁港それぞれで誕生する見込みだ。その具体的な成果についてはNEDOの媒体を通じて順次発信を予定しており、注目していただきたい。

温室効果ガス(GHG)の削減や自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)開示が求められる昨今、それらに関心のある企業や団体からの問い合わせが増え、ブルーカーボンを取り巻く環境の潮目を肌身に感じる。一方、実証先の漁港に足を運ぶと、現場の悲痛な声を耳にする。「かつては海に入れば視界を遮るほどの海藻が繁茂し、上下の感覚を失うほどだった。今はその面影もなく、生き物も姿を消した」。今後はこうした企業と漁業者の橋渡しとなるような持続可能なビジネスモデルを構築し、同事業を全国へと広げていきたい。

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グリーンイノベーション基金事業:「食料・農林水産業のCO2等削減・吸収技術の開発」ブルーカーボンを推進するための海藻バンク整備技術の開発link-icon.png

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NEDO
フロンティア部
GI農水チーム 主任
山田恭平(やまだ きょうへい)
2016年、京都大学大学院修士課程修了。地球環境に関心があり、大気・水質汚染対策や温室効果ガス(GHG)削減技術に関する研究に携わった。同年、プラントエンジニアリング企業に入社。再生可能エネルギー関連施設の設計・施工業務に従事。2024年4月からNEDOに着任し、現在に至る。

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