Focus NEDO

NEDOは2024年12月より、日刊工業新聞の科学技術・大学面において、「NEDO未来展望~イノベーションを社会へ~」と題し、NEDOが推進しているプロジェクト等について、その概要や特徴、目標、現時点での成果等をプロジェクト等の担当者が執筆・紹介しています(年末年始を除く毎週水曜日に掲載)。当Web Magazineではバックナンバー記事を掲載します。

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【76】官民連携、ASEANで競争力(2026年5月27日紙面掲載分)

中国が台頭

東南アジア諸国連合(ASEAN)における日本の産業競争力は大きな転換点を迎えている。象徴的な分野がタイの自動車産業だ。これまでは内燃機関車を軸に日系企業が中心となって完成車製造のみならずサプライチェーン(供給網)全体を構築した同国の自動車産業は、ASEAN最大の生産拠点として発展してきた。

しかし近年、タイ政府による電気自動車(EV)普及政策や投資優遇策を背景に中国系メーカーが急速に台頭している。数年前まで9割超を占めていた日系メーカーの市場シェアは、2025年には約7割弱まで低下した。先日開催されたバンコク国際モーターショーでは、主催者が公表した予約台数を基に、各メディアが報じたランキングで、上位10ブランドのうち8ブランドを中国系メーカーが占めたとされる。こうした趨勢(すうせい)は自動車産業に限ったものではない。他の産業でも中国からの低価格製品が流入し、日系企業のみならずタイの地場企業にも影響を及ぼしている。その結果、2025年の対タイ直接投資において日本は件数では上位を維持する一方、投資額では4~5位程度にとどまり、大型投資の拡大を背景に中国を中心とする投資が日本を大きく上回った。

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実証事業現場で開催された最終成果報告会(2026年2月10日)

日本の強み提案

こうした中、日本企業に求められるのは、自らの強みを生かした価値提案である。具体的には、トータルコストオーナーシップやライフサイクル全体での環境価値などをアピールし、現地ニーズや課題解決に丁寧に貢献し、地場企業のバリューチェーンに深く関与することが重要となる。

一例として期待されるのが、NEDO事業でパナソニックが2024~2025年度に実施したIoT(モノのインターネット)を活用した空調制御技術である。タイエネルギー省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)との連携の下、同社はタイの地場デベロッパーと協働し、快適性を維持した空調制御により25%以上の省エネルギーを実証し、事業終了後に商用化を開始した。性能評価はタイのチュラロンコン大学が担い、地場企業との連携を通じて現地ニーズに最適化した今回の事例は、日本企業の強みを生かしたモデルといえる。

事業後押し

現在、多くの日本企業がASEAN各国におけるカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)や環境対策、成長産業でのビジネスチャンスを模索している。NEDOとしても、こうした取り組みを後押しし、各国政府や地場産業との連携を通じた実証事業を展開し、その成果が社会実装につながるよう、引き続き支援のあり方を工夫していきたい。

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パナソニック株式会社 実証テーマ

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NEDO
バンコク事務所 所長
加藤知彦(かとう ともひこ)
博士(学術)。2002年NEDO入構。評価、技術戦略、環境、ナノテク・材料、AI・ロボット分野を歴任。2025年10月から現職。ASEANにおける政策連携・実証事業を統括。

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