NEDOは2024年12月より、日刊工業新聞の科学技術・大学面において、「NEDO未来展望~イノベーションを社会へ~」と題し、NEDOが推進しているプロジェクト等について、その概要や特徴、目標、現時点での成果等をプロジェクト等の担当者が執筆・紹介しています(年末年始を除く毎週水曜日に掲載)。当Web Magazineではバックナンバー記事を掲載します。
【74】EVバイク 電力消費減支援(2026年5月13日紙面掲載分)
タイで課題に
脱炭素化の潮流の中、世界での電気自動車(EV)の普及は4輪車にとどまらずバイクにも広がっている。中でも今後の普及が期待されるのが、3人に1人がバイクを保有し、2000万台以上が走るアジア有数の「バイク大国」、タイだ。都市部では短距離移動の主役として利用される場面も多く、その台数の多さから、交通安全や環境負荷への影響も小さくない。特に首都のバンコクでは、車両集中による交通渋滞や交通事故、大気汚染が長年の社会問題となっている。電動バイクの普及で交通全体の効率化や安全性向上、環境負荷の低減が期待されるが、一方、普及に向けては電力消費量の急拡大に対応するための対策も不可欠だ。
イーグリッドが提供するMaaS(Mobility as a Service、乗り物のサービス化)プロダクト
独自技術を実証
対策に挑む日本のスタートアップがある。島根県出雲市に本社を置くイーグリッド(島根県出雲市)だ。同社は、車両の位置情報や運転情報などを通信で管理するテレマティクス技術を利用したサービスに強みを持ち、日本国内を中心に事業実績を積み重ねてきた。その技術をバンコク内で乗客を乗せて走る商用のEVバイクに応用する構想が新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「脱炭素化・エネルギー転換に資する我が国技術の国際実証事業」に採択された。6月から、同社独自の技術を使って、EVバイクの電力消費低減とバッテリーの長寿命化の実証実験を行う予定だ。
行動変容促す
この実証事業では、バンコク内に20台のEVバイクを走行させ、EVバイクに搭載した全地球測位システム(GPS)データや、速度・加速度などの運転データを分析し、その結果をライダーにフィードバックする。安全運転への行動変容を促すことで、電力消費を20%以上削減することを目指す。さらに、稼働中はバッテリー状態を常時把握し、バッテリーの長寿命化を図れないかを検証する。採用されるGPSデータや運転データの把握技術は、環境対策以外にも、盗難防止や事故防止、保険料低減、ライダーの業務時間削減など、多数のライダーを抱える配送業者が事業全体の高度化に活用することも期待される。
タイ政府は2030年までに国内自動車生産の30%をEV化することを目指しており、このうち電動バイクの年間生産目標台数を67万5000台に設定している。今後拡大するタイのEVバイクに日本の技術が採用されるよう支援していきたい。
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海外展開チーム 専門調査員
佐藤 誠(さとう まこと)
1987年から約35年間電機メーカーの国際事業に従事、うち15年間は米国、中国、欧州など5カ国と地域で民生、企業間取引(BtoB)の企画・マーケティング・営業などの業務を担当。2023年NEDO入構、企業における製品化や事業化推進の経験を生かし、省エネなどを中心に国際関連業務に携わる。