NEDOは2024年12月より、日刊工業新聞の科学技術・大学面において、「NEDO未来展望~イノベーションを社会へ~」と題し、NEDOが推進しているプロジェクト等について、その概要や特徴、目標、現時点での成果等をプロジェクト等の担当者が執筆・紹介しています(年末年始を除く毎週水曜日に掲載)。当Web Magazineではバックナンバー記事を掲載します。
【70】低温排熱 用途拡大促す(2026年4月15日紙面掲載分)
有力な選択肢
冷却や空調に使われる冷凍機は電気式がほとんどであるが、蒸気や排熱を調達できる大規模施設や工場では、電気の代わりに熱を使う吸収冷凍機が有力な選択肢となる。吸収冷凍機は水の蒸発潜熱から冷熱を得る装置で、蒸発/吸収/凝縮/再生の機能を併せ持ち、駆動力に低温排熱を使うため、使用電力を大幅に抑えることができる。
需要を開拓
そこで、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「革新的プラスチック資源循環プロセス技術開発」プロジェクトでは、環境配慮型の冷熱製造機として期待が大きい吸収冷凍機の利用場面の拡大を視野に、低温排熱の回収を開発テーマの一つに取り込んだ。不純物の混入で焼却処理しかできない廃プラスチックは、燃焼させて主に電気エネルギーとして回収されるが、発電後の温水は用途が限定されるため、この低温排熱を吸収冷凍機に使い氷スラリーに変換することを目指した。
低温の排熱は使いづらい。年間を通じて利用するカギは、大きな需要に結びつけることにある。このため、プロジェクトに参画する八戸工業大学などは、需要の大きい低温物流市場をターゲットに、農産物、水産物などの輸送時の冷蔵保冷剤として使われるシャーベット状の氷スラリーに着目し、これを低温排熱から製造できる吸収冷凍機の開発を目指した。
吸収冷凍機と氷スラリー製造機の連結稼働の様子
経済評価が必須
その結果、八戸工業大は、安定的に氷点下の冷熱を生成するためには、アルコール類の化合物である1-プロパノールを添加することが有効であることを発見した。これにより、摂氏65℃の低温排熱から同マイナス5℃の冷熱を生み出すことに成功した。
また、東京電機大学は、ポリビニルアルコールを微量添加することにより、氷粒子が凝集しにくく、パイプを通すことができる氷スラリーを冷熱から作り出すことに成功した。さらに、青山学院大学は、氷スラリーの詰まりを防ぐパイプ設計の指針を示した。一方、中央大学は、熱源が遠く離れた場合でも排熱を蓄熱して吸収冷凍機に運搬するシステムを設計した。これら一連の成果を社会実装するためには、経済的な評価が不可欠である。高砂熱学工業は、具体的な地域を対象に経済性を評価できるツールを開発し、吸収冷凍機の投資判断に使えるようにした。
これらの技術は、廃プラスチックの燃焼以外の排熱を吸収冷凍機に用いる際にも応用できる。開発成果をより広い場面で活用できるよう促していきたい。
NEDO
サーキュラーエコノミー部3Rチーム 専門調査員
小山俊隆(こやま としたか)
1987年(昭62)山形大学大学院修了。同年日本ペイント入社。2018~2021年神奈川大学非常勤講師。2023年NEDOに入構し「革新的プラスチック資源循環プロセス技術開発」プロジェクト推進担当。雑誌「クリーンエネルギー」2024年11月号でエネルギー回収(ER)成果共著。2025年から先導研究プログラムで廃プラケミカルリサイクルプロジェクト推進担当。