Focus NEDO

NEDOは2024年12月より、日刊工業新聞の科学技術・大学面において、「NEDO未来展望~イノベーションを社会へ~」と題し、NEDOが推進しているプロジェクト等について、その概要や特徴、目標、現時点での成果等をプロジェクト等の担当者が執筆・紹介しています(年末年始を除く毎週水曜日に掲載)。当Web Magazineではバックナンバー記事を掲載します。

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【66】次世代パワー半導体 適用先拡大を支援(2026年3月18日紙面掲載分)

重要性高まる

パワーエレクトロニクスは、トランジスタなどのパワーデバイスのスイッチ動作(on〈導通〉とoff〈非導通〉の高速切り換え動作)により、電力(電気エネルギー)を高効率に変換/制御する技術である。電動車や誘導加熱(IH)式熱源などに代表されるエネルギー利用の電力シフト、風力・太陽光発電の大量導入などを支える技術として、社会的重要性が年々高まっている。

これまで、パワーエレクトロニクス応用機器(電力変換器)にはシリコン(Si)パワーデバイスを利用してきたが、電力制御性能の向上、小形軽量化や高効率化などをさらに進める必要性から、スイッチ動作の高速化、高耐圧化、超低損失化などにおいてSiでは実現困難な水準の性能を示す炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)を用いた次世代パワーデバイスの適用が始まっている。

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支援を行っている3領域と重要開発項目

高コストが壁

しかし、次世代パワーデバイスは、Siパワーデバイスに比べてコストが高い点が普及拡大の壁になっている。グリーンイノベーション(GI)基金事業における「次世代デジタルインフラの構築」プロジェクトでは、「次世代グリーンパワー半導体開発」として、次世代パワーデバイスの開発と電力変換器への適用効果検証、低コスト・高品質ウエハー製造技術の開発と、開発技術の量産適用への支援を進めている。

ロジックデバイスと異なり、パワーデバイスは用途による仕様の違いが大きく、電圧・電流・動作速度などへの要求がケタで異なることも珍しくない。このため、パワーデバイスの設計や製造方法、駆動方法、回路方式、規格要件なども用途により大きく異なる。そこで、同プロジェクトでは電力容量やデバイス耐圧に着目して整理した3類型を設定している。それぞれにおいて、次世代パワーデバイスを使った電力変換器の損失をSiパワーデバイス適用品との比較で50%以上低減、同耐圧・同電流容量のSiパワーデバイスと同等のコストの実現を目指している。併せて、さらなる低コスト化の観点から、8インチ(200ミリメートル)径SiCウエハーの欠陥密度を1ケタ以上低減する製造技術の開発も進めている。

脱炭素に貢献

カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)実現の社会要請に応えるには、次世代パワーデバイスを利用する高性能電力変換器が広く普及する必要がある。同事業の成果が当初想定以外の用途にも展開できるよう、適用先拡大の活動も進めたい。

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分野紹介:「半導体」分野

グリーンイノベーション基金事業:次世代デジタルインフラの構築

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NEDO
半導体・情報インフラ部
パワエレチーム 参与
プロジェクトマネージャー 
山口 浩(やまぐち ひろし)
1994年3月 東京工業大学(現東京科学大学)博士課程修了。博士(工学)。東工大、電子技術総合研究所、産業技術総合研究所で電力機器やパワーエレクトロニクス技術の研究開発に従事。2023年4月からNEDO技術戦略研究センター統括研究員。2025年4月から現職。

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