NEDOは2024年12月より、日刊工業新聞の科学技術・大学面において、「NEDO未来展望~イノベーションを社会へ~」と題し、NEDOが推進しているプロジェクト等について、その概要や特徴、目標、現時点での成果等をプロジェクト等の担当者が執筆・紹介しています(年末年始を除く毎週水曜日に掲載)。当Web Magazineではバックナンバー記事を掲載します。
【64】ブルーカーボン 国産技術で計測機器(2026年3月4日紙面掲載分)
海に囲まれた日本にとって、海洋エネルギーの管理は極めて重要な課題である。一方、こうした産業やエネルギー管理に必要な機器やその運用は、他国の技術に多くを依存している現状がある。
収量把握に
近年、ブルーカーボンに対する関心が高まっている。ブルーカーボンとは、海草、海藻などの沿岸生態系が光合成で二酸化炭素(CO2)を吸収することで大気中のCO2を海中に吸収し、蓄積された炭素のことである。カーボンクレジットの観点から必要となる技術は、ブルーカーボンの収量把握のため、海草や海藻の被度や、種類(CO2吸収係数が異なってくるため)の情報が必要となる。また人為的にブルーカーボンを増やす観点からすると、生育状況の確認、生育環境の把握・制御のための観測・計測器が求められる。
懸賞金コンペティションの流れ
高い難易度
海というフィールドは、時に宇宙開発よりも難易度が高いと言われる環境であり、計測に当たっては、欧米で軍事用に早くから開発されてきた自律型無人潜水機(AUV)や近年中国などが大量製造して安価に販売する遠隔操作型無人探査機(ROV)といった技術が不可欠で、日本でも広く利用されている。
しかし、遠浅の多い海外と異なり、日本の海洋は変化に富む海底、独自の海流、潮流の速さといった特性を有し、海外技術をそのまま使うことは必ずしも適切ではない。観測情報を他国に預けるリスクもある。
コンペ開催
そこで、近年高まるブルーカーボンに対する期待に国産技術で応えるため、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2025年度に懸賞金事業を立ち上げた。今回の懸賞金事業は3次にわたり、徐々に技術的難易度が上がる。2025年10月から公募が始まった1次コンペティションでは、外乱制御、自己位置把握などの要素技術が課題となっている。実際にモノを作り実海域で実施することから難易度は高く、技術のブレークスルーと日本の海洋産業が盛り上がることを期待している。また、自由部門や学生賞を設けるなど、若手人材の育成も意識した。
1次コンペティション、2次コンペティションは、船底のバイオフィルムなど、今後高い経済性が見込まれる分野にもテーマを広げ、2026年中には実海域(平沢マリンセンター)において実施予定である。
2次コンペティションでは、ブルーカーボン、船底のバイオフィルムともに、さらに実践的な技術を課題にする予定である。2026年6月ごろに2次コンペティションに関する説明会を開催する予定なので、関心がある方は、NEDOのウェブサイトやSNSをフォローいただきたい。
ブルーカーボンの懸賞金事業は2027年度の最終3次コンペティションまで続ける予定だ。その後は、事業化に向けた機器を開発するとともに、ブルーカーボンクレジットにおける標準仕様の確立、海外展開まで目指したい。
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フロンティア部
ムーンショットユニット 主査
青山 智佳(あおやま ちか)
お茶の水女子大学大学院人間文化研究科ライフサイエンス専攻博士前期課程修了。2017年度からNEDO新エネルギー部風力・海洋グループにおいて海洋エネルギーを担当。2024年度から現職。