NEDOは2024年12月より、日刊工業新聞の科学技術・大学面において、「NEDO未来展望~イノベーションを社会へ~」と題し、NEDOが推進しているプロジェクト等について、その概要や特徴、目標、現時点での成果等をプロジェクト等の担当者が執筆・紹介しています(年末年始を除く毎週水曜日に掲載)。当Web Magazineではバックナンバー記事を掲載します。
【63】航空機産業を循環型に(2026年2月25日紙面掲載分)
出口までの道筋
前回、航空機の機体に使われた炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を再び「航空機に戻す」ためのリサイクル技術の開発を紹介した。しかし、リサイクルの入り口となる技術だけ整えても循環は生まれない。退役機由来の複合材は用途の認知が低く、リサイクル材としての需要は限られている。規制・認証の未整備、品質のバラつき、需給量の不足が重なり、静脈産業として確立していないためだ。
航空機産業は開発期間が長く、認証という制度的ハードルを伴うため、民間単独ではリスクを引き受け切れない領域である。経済産業省が2023年3月に示した「成長志向型の資源自律経済戦略」において動静脈連携を掲げたのも、こうした構造的課題が背景にある。そこで新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、個別技術の開発にとどまらず、「出口までの道筋」そのものを設計対象とし、産業化を前提に関係者を束ねる役割を担い、長い時間軸で実装に運ぶ枠組みを整えた。
「次世代航空機向け静脈産業構築事業」概略図
一貫工程へ刷新
その枠組みを具体化したのが、2月16日に公募を終えた「次世代航空機向け静脈産業構築事業」である。退役機由来のCFRPを対象に①サプライチェーン(供給網)基盤技術②大型廃材の高効率切断技術③リサイクルCF連続化基材④リサイクルCF適用技術―の4本柱を一体で開発する。切断条件は回収繊維の損傷や残留物の発生に直結し、その再現性が基材品質のバラつき低減と認証説明の根拠となる。
さらに適用先を二次構造部品・内装部品に設定し、要求性能を段階的に確定することで、需要の見通しと事業性を描く。工程ごとの最適化にとどめず、一貫工程として設計し直す点が同事業の要であり、規制・品質・需要の三つの壁を同時に越える。2026~2027年度に基盤を整え、2028~2030年度に民間実装に橋渡しする。
パリで国際発信
NEDOは本事業を通じ、技術開発と制度・市場をつなぐ「産業編集者」としての役割を果たしている。静脈産業は単一技術では立ち上がらない。3月10~12日、仏パリで開催される複合材料展「JEC World 2026」に、NEDOは初めてブースを設ける。
退役機の複合材料を航空機に再び利用するリサイクル技術からその価値を高める認証まで、日本が描く循環型航空機産業の設計図を示す。長い時間軸と高リスクを引き受ける公共の存在意義を、国際舞台で発信する予定である。
関連ページ
分野紹介:「航空・宇宙」分野
公募情報:「次世代航空機向け静脈産業構築事業」の公募について(公募期間終了)
経済産業省 「成長志向型の資源自律経済戦略」を策定しました![]()
NEDO出展予定:JEC World 2026(2026年3月10日~3月12日)
NEDO
航空・宇宙部
航空材料ユニット ユニット長
井上 能宏(いのうえ よしひろ)
京都大学大学院農学研究科卒(分子生物学)、2001年特許庁入庁。樹脂、繊維、合金、医薬品、化粧品、電池などの審査を主に担当。2024年7月から現職。航空材料(機体材料、エンジン材料)に関し、CFRPリサイクルに関するプロジェクトのほか、複合材料に関する各種プロジェクトに参画。
