Focus NEDO

NEDOは2024年12月より、日刊工業新聞の科学技術・大学面において、「NEDO未来展望~イノベーションを社会へ~」と題し、NEDOが推進しているプロジェクト等について、その概要や特徴、目標、現時点での成果等をプロジェクト等の担当者が執筆・紹介しています(年末年始を除く毎週水曜日に掲載)。当Web Magazineではバックナンバー記事を掲載します。

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【59】低品位鉄鉱石 水素で還元(2026年1月28日紙面掲載分)

技術転換の時

わが国の鉄鋼業は、原料となる鉄鉱石・石炭のほぼ全量を輸入に頼りつつも、高度な生産技術によって高品質鋼材を製造し、国際競争力を維持してきた。そして現在、地球温暖化対策や脱炭素社会の実現に向け、従来の高炉法(炭素還元法)から二酸化炭素(CO2)の排出を伴わない水素還元法への技術転換が求められている。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、この技術革新をけん引する役割を担い、製鉄プロセスのカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)化に向けた「製鉄プロセスにおける水素活用」プロジェクトを推進している。

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「製鉄プロセスにおける水素活用」プロジェクト開発技術の概要

炭素から水素へ

木炭や石炭などの炭素を用いて鉄鉱石を還元し、鉄鋼材料を得る高炉法技術の歴史は古く、14世紀ごろには現在と同様の構造や原理で鉄が生産されていた。同プロジェクトは、数百年の歴史を経て高度に構築された技術を転換しようという取り組みだ。その柱は、「高炉を用いた水素還元技術」と「水素だけで低品位の鉄鉱石を還元する直接水素還元技術」の確立である。

このような100%水素により鉄鉱石を還元する大量生産製鉄技術の開発プロジェクトは、欧州をはじめ世界各地でも数多く進められている。わが国の鉄鋼業が脱炭素時代においても競争力を維持するためには、他国に先駆けて技術を確立する必要がある。既に「高炉水素還元」の開発プロジェクトでは、試験炉で世界最高水準となるCO2削減率43%を達成した。他のプロジェクトでも試験設備が順次稼働し、本格的な試験に入りつつある。

競合しつつ協調

同プロジェクトは高炉各社と金属系材料研究開発センター(JRCM)がコンソーシアムを形成して進めている。各社が競う形で開発を進めているが、企業間、課題間で共有可能な知見に関する連携や取り組み課題の分担による加速と効率化を求めている点に特徴がある。わが国の鉄鋼業は、歴史的に販売や技術開発では競合しつつも、協調すべき分野では業界団体や学術団体の活動を通じて連携・交流を進め、お互いに顔が見える関係を築いてきた。NEDOのプロジェクトにおける連携・分担の追求も、こうした業界文化を土台にしている。今後は、2028年から2040年ごろにかけてプロジェクトごとに設定している社会実装可能となるステージを実現することが大きな目標となる。脱炭素の実現を社会課題として捉え、研究開発のアクセルを緩めることなく取り組んでいきたい。

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NEDO
サーキュラーエコノミー部
製鉄チーム チーム長
加藤 徹(かとう とおる)
「製鉄プロセスにおける水素活用」プロジェクトマネージャー。1990年に名古屋大学大学院工学研究科博士課程前期課程修了後、同年住友金属工業(現日本製鉄)に入社。連続鋳造プロセスに関する研究開発や研究企画業務に従事し、2020年金属系材料研究開発センター(JRCM)に出向。2025年4月から現職。

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