NEDOは2024年12月より、日刊工業新聞の科学技術・大学面において、「NEDO未来展望~イノベーションを社会へ~」と題し、NEDOが推進しているプロジェクト等について、その概要や特徴、目標、現時点での成果等をプロジェクト等の担当者が執筆・紹介しています(年末年始を除く毎週水曜日に掲載)。当Web Magazineではバックナンバー記事を掲載します。
【58】CO2分離回収 排出源を回収源へ(2026年1月21日紙面掲載分)
揺らぐ供給網
二酸化炭素(CO2)削減に向けた取り組みが進められている一方で、産業ガスとして用いられるCO2は近年不足している。石油製品の需要減少や国際競争の激化により、主要な供給源だった国内製油所の停止や閉鎖が生じているためである。必要量が確保できず、価格高騰や取引制限が行われ、さらに輸入する事態となっている。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、グリーンイノベーション(GI)基金を通じ、これまで行われてこなかった低圧・低濃度の排ガスからのCO2分離回収を可能とする技術の研究開発を進めている。目標は、現在1トン当たり9000円から1万2000円程度と試算される回収コストを2030年までに2000円台まで引き下げることである。
同技術が低コストで社会実装されれば、これまで敬遠されてきた小規模や低圧・低濃度の排出源を新たな回収源として転換することができる。その結果、CO2の需要家に近い排出源からCO2を回収できるため、短距離輸送や気体によるパイプライン輸送が可能となり、CO2引き渡しコストの引き下げも期待できる。
将来、開発される新たな回収源を見据え、利用先も踏まえた回収源のあり方を検討することが重要である。本稿では、当面の需要先となり得る、CO2直接利用および早期社会実装が期待される水素を利用しないCCU(CO2の回収・利用)の需要の可能性を考えてみた。
CO2の需要先イメージ
需要増の可能性
現在、国内では年間約100万トンのCO2が利用されている。このうち、ドライアイス、溶接、飲料への利用が約7割を占める。
最大用途であるドライアイスは、需要が多い運送業界においてドライアイスに代替する蓄冷材の導入も進んでいるが、取り扱いが容易なドライアイスの需要も底堅く、当面は一定の需要が見込まれる。
ドライアイスの場合、CO2の回収源、加工場、需要家の距離が短いほど、CO2排出量および昇華による輸送ロスが削減される。このため、これらの拠点の集約化が望ましい。
一方、水素を利用しないCCUとしてコンクリートにCO2を積極的に吸収・固定化させる技術開発も進められている。コンクリート製造(混練)時や養生時にCO2を固定化する技術、CO2を固定した混和材や骨材を利用する技術があり、これらを組み合わせて利用することも可能である。このような技術の普及により、建設業界においてもCO2の需要が高まっていくと考えられる。
今後も多様な技術開発を通じて、CO2回収から利用までの選択肢を広げ、脱炭素の促進とサプライチェーン(供給網)の安定化に取り組んでいきたい。
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NEDO
サーキュラーエコノミー部 主任
宗野 由真(むねの ゆみ)
2016年大阪府立大学現代システム科学域環境システム学類卒、同年、大阪府庁環境職として入庁。大気汚染防止対策業務や気候変動対策推進業務に従事し、2024年にNEDO入構。環境部次世代火力・CCUSグループに配属後、 同年7月のNEDO組織改編に伴い現職。