Focus NEDO

NEDOは2024年12月より、日刊工業新聞の科学技術・大学面において、「NEDO未来展望~イノベーションを社会へ~」と題し、NEDOが推進しているプロジェクト等について、その概要や特徴、目標、現時点での成果等をプロジェクト等の担当者が執筆・紹介しています(年末年始を除く毎週水曜日に掲載)。当Web Magazineではバックナンバー記事を掲載します。

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【56】非住宅・中高層に木材拡大(2026年1月7日紙面掲載分)

森林を循環利用

わが国では、戦後に植林された人工林の多くが現在伐期を迎えている。森林は主要な二酸化炭素(CO2)吸収源である一方、近年は森林の高齢化によりCO2吸収量が減少傾向にある。「伐(き)って、使って、植えて、育てる」という人工林の循環利用を確立し、木材利用を拡大することが目下の課題である。そのためには需要拡大が必要だ。国土交通省の調査によると、2024年度の新築着工建築物の木造率は約47%であり、用途別・階層別にみると1~3階建ての低層住宅は約80%であるが、非住宅や中高層建築物はほぼ非木造となっている。今後は非住宅・中高層建築物の木造化・木質化が木材利用拡大のカギとなる。

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グリーンイノベーション基金事業で研究開発中の等方性大断面部材

異方性を改善

農林水産省は、2021年に策定した「みどりの食料システム戦略」の中で、吸収源対策として2040年の「高層木造建築物の拡大」を掲げた。これを踏まえ、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は農林水産省とともに2022年度から「グリーンイノベーション基金事業/高層建築物等の木造化に資する等方性大断面部材の開発」プロジェクトを開始した。

木材は製造時のCO2排出量が少ないことに加え、加工が容易、軽量かつ比強度が高いといった特徴を有する。一方、非住宅・中高層建築物への利用に際しては、コストや安定供給、構造設計が複雑であることが課題となっていた。同プロジェクトでは、木材の特徴である異方性(繊維方向とその直交方向で強度が異なる性質)を改善した「等方性大断面部材」を開発している。等方性大断面部材の実現により、工期の短縮、躯体の軽量化、設計や意匠の自由度拡大が期待される。

2031年度実装へ

部材サイズは、最大の厚み300ミリメートル・長さ8メートルを予定している。既に建築市場で大量に利用されている「構造用合板」をベースとして作成するため、需要に応じた安定供給が可能となる。コストについても、歩留まり向上、大径木利用などにより先行部材と同等以下を目指している。また、高層建築物への適用を想定した2時間耐火性能や事務所・高齢者施設など床としての利用に十分な強度を確保する。

2025年度からは、コア技術となる合板同士の接合方法や配置について検討を始めており、2026年度、連続製造工程の構築を開始した。2027年度末には実大サイズの試作品が完成する予定である。その後は、日本農林規格(JAS)化や建築基準への位置付けに必要なデータを取得し2031年度の社会実装を目指す。

関連ページ


グリーンイノベーション基金事業:食料・農林水産業のCO2等削減・吸収技術の開発link-icon.png

/高層建築物等の木造化に資する等方性大断面部材の開発

インタビュー記事:農林水産業を通じたCO2の吸収、炭素の貯留拡大につながる技術開発とはlink-icon.png

農林水産省 みどりの食料システム戦略link-icon.png

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NEDO
フロンティア部
GI農水チーム 主任
中川 朔良(なかがわ さくら)
筑波大院博士前期課程修了。修士(理学)。2022年NEDOに入構。新領域・ムーンショット部(現フロンティア部)総括グループにて、予算管理、広報業務などに従事。2024年1月より現職。

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