NEDOは2024年12月より、日刊工業新聞の科学技術・大学面において、「NEDO未来展望~イノベーションを社会へ~」と題し、NEDOが推進しているプロジェクト等について、その概要や特徴、目標、現時点での成果等をプロジェクト等の担当者が執筆・紹介しています(年末年始を除く毎週水曜日に掲載)。当Web Magazineではバックナンバー記事を掲載します。

【54】会議の生産性 AIで高める(2025年12月17日紙面掲載分)
技術で手助け
理想的な会議の条件はさまざまあろうが、生産性の高さは多くの人が挙げるのではないか。すなわち、目的と課題からずれることなく、必要十分な人の参加に絞って、過不足のない議論が戦わされ、最小限の時間で皆が納得する結論に到達できる会議である。
生産性の高い会議を目指して腐心する主催者やファシリテーターを助ける技術を提供できないか。その実現を目指し、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「人と共に進化する次世代人工知能に関する技術開発事業(2020~2024年度)」の中で、名古屋工業大学大学院工学研究科の白松俊教授を中心とするグループがAI(人工知能)を活用して議論のグラフ文書化・構造化を可能とする技術を開発した。

議論の過程で自動生成されたグラフ文書の例
書記役不要に
同技術は参加者の発言をAIが音声認識し短文化して四角の枠(ノード)に表示した上で他の意見との関係を分析し配置していく。ノードは意味合いに応じて色付けされ、ノード間の相互関係が「要素」「解決案」「具体論」「賛成」「反対」などと表示される。これらの出力には同じくNEDO事業に参画したOKIが開発したグラフ文書エディターが利用されている。
会議中の発言を書記役がボードに記入する必要も、付箋紙を使って整理する必要もない。発言から整理された形でノードが追加されるまでに1~2分を要するが、その間も議論を進められるので会議の進行を妨げることはない。また、事前に会議の主旨をAIに指示しておくと、AIペルソナ(仮想の参加者)が議論されていない論点を指摘し、ファシリテーターを助ける。
高い納得感
佐賀市における実証実験では、参加者から「解決策の検討という主題に集中しやすかった」「長所だけでなく短所も漏れなく検討できた」などの感想と共に、高い納得感が得られた。市民とAIが共創することで地域の課題を解決する姿が評価され、社会基盤情報流通推進協議会が主催する「アーバンデータチャレンジ2024 ビジネス・プロフェッショナル部門」の最優秀賞を受賞した。
同技術の社会実装を目指して名古屋工業大学発ベンチャーのソシアノッター(名古屋市昭和区)が2024年に設立された。同社は「AI・人工知能EXPO2025秋」のNEDOブースに出展し、会議の即時可視化という他に類を見ない技術として来場者に注目された。企業・官公庁・団体・学校などあらゆる場面で人と人の意見をつなぎ、社会の結び目となることが期待される技術である。社会実装に向け引き続き支援していきたい。
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NEDO
AI・ロボット部
人機械共進化チーム 主査
芝田 兆史(しばた よしふみ)
1986年京都大学理学部卒、同年ミノルタカメラ(現コニカミノルタ)入社。複合機などの開発部にて電子写真プロセスの数値解析とそのソフトウエア開発に従事。2021年よりNEDO出向。「人と共に進化する次世代人工知能に関する技術開発事業」プロジェクトマネージャー。