NEDOは2024年12月より、日刊工業新聞の科学技術・大学面において、「NEDO未来展望~イノベーションを社会へ~」と題し、NEDOが推進しているプロジェクト等について、その概要や特徴、目標、現時点での成果等をプロジェクト等の担当者が執筆・紹介しています(年末年始を除く毎週水曜日に掲載)。当Web Magazineではバックナンバー記事を掲載します。
【52】ソフト・データ起点 AIロボティクス推進(2025年12月3日紙面掲載分)
人手不足解消へ
物流、建設、製造をはじめ多くの産業分野で人手不足が叫ばれて久しい。その解決策の一つとしてロボットを思い浮かべる方も多いのではないだろうか。しかし、人手不足の現場でのロボット導入はまだまだだ。それはなぜか。経済産業省の半導体・デジタル産業戦略会議では、少量多品種のロボットシステムが求められる市場の特徴としてロボットの多様な動作と人と接する複雑な環境への対応が必要であること、しかしながら、現状では、まだ開発の柔軟性の低さ(開発課題)と、自律的判断・動作の困難さ(技術課題)の大きく二つの課題があると指摘している。

ロボットの導入市場(左)と少量多品種市場へのロボット開発・導入の課題(右)
2つの事業
これらの課題を解決すべく、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は経済産業省と共に2025年から、「ロボティクス分野におけるソフトウェア開発基盤構築」「ロボティクス分野の生成AI基盤モデルの開発に向けたデータプラットフォームに係る開発」という二つの事業を開始した。前者の事業では、ロボットシステムのソフトウエアをモジュール性が高いアーキテクチャーとし、品質検証の仕組みを設けて、高品質なソフトウエアを幅広く手軽に利用できるようにする。
後者の事業では、小売や物流、製造など多様な現場でロボットの動作データを大規模に収集し、これを基にロボット基盤モデルの開発を進める。さらに、データや基盤モデルを公開して、多数の事業者が利用できるようにし、より多くの現場の要求に応えるモデル開発が進む環境を作る。ここで重要なのは、収集するデータの量に加え、データの多様性と品質である。今、世界中でロボットデータの収集が始まっているが、どのようなデータを整備することが最適か結論は出ていない。このデータ整備の解決策を見いだした者が、この分野をリードすることになるだろう。
協働の知で
今回紹介した二つの事業は、いずれもわが国のAI(人工知能)ロボティクスを推し進める礎になると期待しているが、重要なのは、NEDO事業終了後にその成果が社会で広く活用されることだ。これらの基盤を起点に、ロボット産業に新しい事業者が数多く参入し、多様かつ高品質なソフトウエアやデータが還流するエコシステムを形成していくことがロボット産業発展のカギとなる。ロボット産業に関わる多くの事業者・研究者とさまざまな優れた現場を擁する日本の特長を最大限に生かし、協働の知でAIロボティクスによる社会課題の解決に取り組んでいきたい。
関連ページ
ニュースリリース:ロボット活用領域の拡大に向け、ソフトウエア開発基盤構築の研究開発に着手します(2025年8月4日掲載)
ニュースリリース:ロボティクス分野の生成AI基盤モデルの開発に有効なデータプラットフォームの研究開発に着手します(2025年8月8日掲載)
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NEDO
AI・ロボット部
人機械共進化チーム チーム長
土井 浩史(どい ひろし)
1995年京都大学大学院修士修了。三菱電機とデンソーアイティーラボラトリにて、高度道路交通システム(ITS)の設計開発、画像認識、AIの研究開発に従事。2022年NEDO入構。ロボットアクションプランの策定、AIロボティクス事業の企画およびプロジェクトマネジメントを担当。